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純不良

「死ぬのと生きるのどっちがつらい?」

chap.9


PM3:00

僕らはバイトを終え帰宅途中、思いがけない奴と遭遇した。

決して『あいつ』ではない。

その人物は隣町の不良 宮田 面目であった。

大柄な体格にぴちぴちの学ランを着たうざい奴だ。

「見つけたぞ!貴様ら!」

うるさい声で怒鳴りつけてきた。

するとそこへ

「なんだ、なんだ」

「あいつまた来たのかよ」

近くにいた八百屋『鮮度100%』の店主 東道 西拝と魚屋『魚心』の店主 魚河岸 水禍である。

二人は自らの仕事をほっぽりだして野次馬としてやってきた。

まあ、いつものことだし、客も少ないからいいけど。

「ふっ、今日はいつもよりギャラリーが少ないな」

宮田はそう嘯くと囚は――――

「悪いが今日は気分が乗らないんだ、明日にしてくれ」

軽く受け流した。

「貴様、さては俺様が怖いんだな、怖いんだろ」

いまどき、俺様って。痛い奴だ。

「聞こえなかったか明日にしてくれ」

囚がそう言うと宮田は先の欠けた釘バットと錆付いたチェーンを取り出した。宮田の愛用の武器だ。時代遅れにもほどがある。

「うおーーーーーーーー」

宮田は囚めがけて走り出した。

雄たけびがドップラー効果によりだんだん大きくなっていく。

そこで囚は構えた。

大きくなっていく宮田の顔面を見据えて昔から変わらぬ決め台詞を発する。

「宮田 面目、お前は悪くない、悪いのはすべて俺だ。なぜなら俺は絶対悪、混沌も混乱も黒く染める。絶大にして最強、唯一有二の存在だ。だから―――ふっとべ」

いつもの決め台詞を一回も噛まずに言い切った。

囚の右ストレートが宮田の顔面を捉えた。


囚の右ストレートが炸裂する。

宮田は宙を舞った。そしてそのまま空の彼方へ飛んでいった。

もう見えない。今日もいい天気だ。

「いやーすごいね、まったく」

「さすが囚ちゃん、たいしたものだ」

たいして驚きもせず褒め称える東堂さんと魚河岸さん。

もちろん彼らは囚の右ストレートをいつも見ている。

右ストレート

単純な暴力であり、もっとも簡単な技だ。そして幽霊白書の主人公の名台詞通りまっすぐいってぶっとばす。

囚はこれに絶対の自信を持っている。

いつも喧嘩のときは右ストレートで敵を倒す。どんな敵も一撃必殺だ。

そしていつもあの長い台詞を言う。別に言わなくても倒せるけど。

「そうだ囚ちゃん、珍しく櫻島大根が手に入ったんだ。持ってきな」

「こっちは日本海産の本マグロだぜ」

気前のいい二人は囚に袋を渡した。

働けよ、お前ら。

しかもギャラリー料である。

いつもはもっと人がいて囚が持てないほどの量を渡してくる。囚の生計はここからなりたっていると言っていい。

「いつも悪いな、おっさん達」

もちろん悪いのは囚だ。やっていることは悪行の限りを尽くしている。

こうなると本当宮田が不憫だ。何しに来たんだよ、あいつ。

今頃治療を受けているだろうな。あの様子だと骨折は免れない。

現代医療だと完治に一日はかかる。

「こういうのも悪くないよな」

いや、だから悪いのはお前だ。

僕は心の底から思った。


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