マイケルと白い少女
chap.8
本題に入る前に謎の男マイケル・マクマーニついて語ろう。
身長2m越え、体重90kg。
自称日系イタリア人。
スキンヘッドに全身筋肉の塊のような巨漢。
旧国立商店街の楽器屋『バチカン」の店主。
片言の日本語に変な語尾をつけてしゃべる。
商店街では3番目に有名人(あとの人物は後ほど)。
好きな食べ物 お寿司
嫌いな食べ物 納豆
好きな名所 富士山もとい不死山
妻子なし。
知り合いも少ない。
どこかのガキ大将並に音痴。
特技は筋肉で相手を威嚇すること。
趣味は切手集め しかも様々な時代の様々な国のやつ。
好きなことはおしゃべり。
苦手なことはコミュニケーション(本人に自覚なし)。
昔は世界中を飛び回っていた。
武勇伝は星の数ほどある。
元暴走族の総長 燃え盛るビルから奇跡の生還
ライオンと象と同時に戦って怪我一つしなかった
背中の傷は男の勲章などなど赤い請負人並にある。
あきらかに噂に尾ひれがついたものばかり(原因は囚)だがそれが信じられるからすごい。
さてそんなマイケルを訪ねてくる客はいるのであろうか――――
「やっぱり、ここにいましたか、マイケル」
いた。
「あなたはここで何をやっているのですか?」
白い少女は僕に尋ねた。しかし、その顔は無表情である。
知らない男に声をかけるとは最近の子供のわりに度胸があるようだ。
僕が何もしゃべらないと分かると少女は僕を無視して店の中に入っていった。
ああ、やはり天気予報のようにはいかないな、と僕は思った。
しょうがなく僕は店先の掃除を再開した。やはり、何も汚れていない。
僕はあの少女を知らない。
知らないはずなのに、なぜか僕の心に何かが突き刺さる。もやもやとしたものが僕の心の中に存在する。
あの少女は何者なのだろうか――――
数分後、少女は店から出てきた。
相変わらずの無表情だ。
すると少女は振り返って
「あなたのお名前はなんですか?」
とまた僕に尋ねた。
沈黙
僕が何も答えないでいると
「・・・・・・やはりあなたはそうなのですか」
そうつぶやいた。
意味が分からなかった。
僕は少女を見る。
少女は僕を見ていない。
彼女の目には僕が映っているが、僕の目には彼女が映らない。
まるで鏡のように対称で世界のように相対だ。
囚や『あいつ』とも違う何かを僕は感じた。
僕は正義で囚は悪だ。
この少女には何もない。
正義も悪も―――自分さえも―――
「さようなら、正義の人」
無機質で無感情な声でそう言って少女は去っていった。
取り残された僕にはどうすることもできなかった。
こんな気持ちは初めてだ。何かに置いていかれるような―――何かを失いそうな気分だ。
翼をもがれた鳥はきっとこう叫ぶだろう。
空はとてつもなく大きい、君たちはなんてちっぽけなんだ