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暗中無

プロローグ

「人はどうして生まれてくるのかな?」

ある日突然、『あいつ』は僕に尋ねた。

それに対して僕は中学生みたいなことを言うな、と思った。思うだけだった。

しかし、このとき僕らはまだ中学生ですらなかった。僕も『あいつ』もただの子供だった。世界のことなんて何も知らない。極々矮小な存在だった。

「ねえ、聞いてるの。こっちを向いてよ。僕のことちゃんと見てよ」

うるさい。顔を覗き込むな。シリアスな冒頭が数行で台無しだ。

「ちゃんと答えてよ。僕の質問」

質問・・・・・・ああ、どうして生まれてきたかってか。そんなのは保健の教科書でも見て勉強しろ。なんでも僕に聞くんじゃない。

「そーいうのじゃなくてー。どういう目的で生まれてきたかってこと」

目的?そんなものがあるのか?この世に生まれてきたのは僕の意思ではない。あるとしたら目的ではなく使命というべきだろう。生物的に見れば子孫を残すという使命だ。

「使命か。確かにそうだね。じゃあ、生きるってどういうことだと思う?」

生き続けることだろ。生き続ける=生きるだ。

「そうなのかな?まあ、君が言うならそうなんだろうけど」

『あいつ』は渋い顔で言った。どうにも腑に落ちないと言いたそうだ。

「じゃあじゃあ、死ぬってどういうこと?」

死に続けることだ。

「それってどういうことなの?死は永続的なものってこと?」

永続的、いや永久的だな。

僕らの生は須臾のごとく短い。

僕らの死は永々無窮に続いていく。

「僕らはなんで生きてるのかな?生き続けているのかな?」

この世に生まれたんだ。この世界のためだろう。この世界に生まれて、この世界のために死ぬ。人間とはつまりそういう生き物なんだ。

「そうかな。僕は違うと思う」

なんだよ。僕の言うことならなんでも正しいんじゃなかったのか。

「君の言うことは正しいよ。正しくて正しくて正しすぎるくらい正しい。でも、僕は違うと思う。正しいからこそ違っていると思う」

言っていることが矛盾している。まるでアベコベだ。嘘つき者のクイズのようだ。

「僕は嘘つきだから。嘘をついてもいいんだよ。間違ったことも言っていい。そうだね・・・・・・君はきっと正義のために生きているんだよ」

正義?生憎僕は仁義に厚い性格はしていない。

「仁義とかヤクザみたい」

『あいつ』はクスリと笑う。

本物のヤクザを見たことないくせに。父さんの仕事上よく見かけるが、あんなの犯罪の正当化だろう。

「そうなんだ。そういう人たちにはなるだけ関わっちゃダメって言われてるけど・・・・・・僕の言う正義はそんなのじゃないよ」

お前の言う正義はなんなんだ。

「えっと・・・・・・口で言うのは難しいな。そして恥ずかしい」

『あいつ』は顔を赤らめた。今度ははにかむように笑う。

「信念、想い、そういったこと。でもそれだけじゃダメ。それを認めてもらう人がいて初めてそれは正義になる」

『あいつ』は真剣な顔で言った。僕の瞳をじっと見つめていた。

「君は僕が認めた。だから君は正義だ」

僕は正義らしい。正義になってしまったらしい。

でも、それならーーそれならお前は正義じゃないのか。

「僕は正義じゃないよ。僕に正義なんてない」

そう言って『あいつ』は途端に悲しそうな表情をする。本当に悲しいんでいたのだろう。目が潤っていた。今にも泣き出しそうだ。

じゃあ、お前はなんで生きいているんだ、と僕は尋ねた。

「君のため・・・・・・だよ」

そう言う『あいつ』の顔は笑っていた。嘘みたいに笑っていた。でもその笑顔は本物だ。

僕のために生きてどうする。

僕のために生き続けてどうなる。

人間はいつか死ぬのに。

絶対に死んでしまうのに。

「僕は君のために生きるよ。でも君のために死んではやらない」

そう言い放った『あいつ』の顔は笑っていたのか、それとも泣いていたのか。僕には分からなかった。

「よしっ。『今』の話はお仕舞いにしよう」

『あいつ』は涙を拭ってパンッと手を打った。切り替えの早い奴。こういうところが僕は嫌いだ。自分で話を始めて自分の気分で話を切り上げる。言い換えればこいつは都合のいい奴だ。不都合なことから目を背けている。ハッピーエンド至上主義。

それで一体なんの話を始めるつもりだ。『今』の次は『未来』か。僕らに未来があればの話だが。

「ふふっ。未来もとい夢かな。僕の夢。そして君の夢」

夢?僕の夢?

「夢はそう簡単には叶えられないものだよね」

『あいつ』は言った。

「夢を見るのは子供までって言ったやつはその夢を叶えてやる義務があるとは思わないかい」

僕は答えない。

「子供に夢を見させるのってその夢を壊すのと同じくらい不条理だよ。誰も彼もが夢を叶えることができるわけではないのにね。大人は子供で夢を見るのだろうね」

知るか。そんなこと。

「そうなんだよ。大人になるってことはつまり夢を見ないってことなんだ」

見ないんじゃなく、見えなくなるのでないだろうか。

「理想はどうにでもなるけど、現実はどうにもならないよね」

それはどうだろう。

逆じゃないのか。

現実はどうかなるが、理想はどうにもできない。

「現実論なのかな?それとも理想論?」

ただの空想だ。

正義と悪が表裏一体のように。

現実と理想は鏡合わせの偶像だ。

どっちつかずの二律背反。

「君の言うことは難しいね。僕にはよくわからないや」

勉強をしろ。

「だからさ。僕にも分かるように教えて欲しいんだ」

勉強をか?

「違う。違う。そんなことじゃない。そんな夢をぶち壊すようなことを言わないでくれ」

ああ、そうかい。

僕はいい加減目覚めたいんだ。手短に言え。

「僕に君の夢を教えて欲しい」

僕の夢?

「ねえ、君の夢は何?」

『あいつ』の囁きが僕の耳に反響する。

その響きが全身を震わし、僕は目覚めた。


どうも嘘弱です。

pixivで連載していたのを持ってきました。

サブタイの暗中無は白昼夢と暗中をかけただけです。

暗がりの中には何もない

それゆえ恐ろしい

という・・・・・・意味はないですけどね

そんな適当な作者ですがやる気50%思いつき30%悪意19%言葉遊び1%でがんばっていきます。ほとんど言葉遊びですけどね


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