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第9話「義元動く」

「この望月千代女、ぜひともアナタのために働きたいのです。」


 千代女の口から出てきたのは予想外の言葉だった。


「え、つまりそれって俺に仕えたいってこと・・・?」


「はい。」


 彼女に恋する四郎としてはその申し出はとても嬉しい。しかし、一つ疑問があった。


「なぜ俺なんだ?普通仕えるなら父上か兄上では・・・。」


 武田家の現当主は父・晴信。そして次期当主はおそらく兄・義信だ。それに対し、家督を継ぐ可能性の低い四郎に仕える利点などない。そもそも四郎は元服すらまだだ。普通に考えておかしな話である。

 千代女はニコッと微笑むと、この四郎の問いに答えた。


「それは、あなたに興味を持ったから。山賊に助けてもらったあの時、私は四郎様に惚れたのです。」


 この笑顔を見て、申し出を断ることができる男など果たしてこの世にいるのだろうか。


「分かった。ただ、俺はまだ12。お前を雇ったところでその力を上手く使いこなせんだろう。だから俺が元服したその時、また来てくれ。」


「わかりました。必ず、またアナタのもとへ駆けつけます!」


(さすがにすぐには雇ってくれないか~。ま、元服してからでも別に遅くはないか・・・。12ってことはそろそろだろうし。)


 千代女は一旦駿河に帰ることにした。





 永禄3年5月、ついに今川義元が動いた。2万5000もの大軍を率いて尾張織田領に侵攻したのである。今川軍の勢いはすさまじく、織田家滅亡は時間の問題と思われた。


「ひぃ・・・!今川の大軍がすぐそこまで・・・!」


「もう駄目じゃ!おしまいじゃ~!」


 狼狽する織田家臣達。それもそのはず、今川軍2万5000に対し織田軍はかき集めてもせいぜい5000。勝ち目などあるはずがない。

 しかし、家臣団の中に一人だけ冷静な男がいた。彼の名は柴田勝家(しばたかついえ)。織田家一の猛将である。


「お主ら静まれぇい!殿の御前であるぞ!」


 この勝家の一喝により家臣達は静まった。


「籠城か、出撃か・・・。殿、いかがいたしまする?」


「うむ・・・。」


 織田家当主・織田信長(おだのぶなが)。幼い頃は『尾張の大うつけ』と馬鹿にされていた彼だったが、家督を相続すると瞬く間に尾張を統一、非凡な才能を発揮していた。

 しかし、今回ばかりはさすがの信長もお手上げであった。


「籠城しかあるまい・・・。」


 信長は籠城を決定した。

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