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第7話「海道一の弓取り」

「さてと、そろそろ動くとするか・・・。」


 天下に最も近い男がついに動き出す。

 その男の名は今川義元(いまがわよしもと)。『海道一の弓取り』の異名を持つ男。公家のような出で立ちにまんまると太っただらしない体。しかし、不思議と醜さを感じさせない。名門の威厳のようなものが体から滲み出ているからだ。


「武田の動きはどうだ。」


 義元はそばにいた少女に問いかける。


「特に目立った動きはありません。」


 少女は無表情で答える。当然この少女、ただ者であるはずがない。


「まあ、武田のことは心配いらぬか。三国同盟も結んであることだしな。」


 甲相駿三国同盟(こうそうすんさんごくどうめい)。天文23年に武田・北条・今川の間で結ばれた同盟で、これにより義元は背後を気にすることなく上洛できる。


「しかし、少し気になることが・・・。」


「気になること?」


 義元はギロッと鋭い目つきで少女を見る。


「はい。実は駿河に帰る途中、甲斐国内で一人の男に会ったんですが・・・。その男、ただ者ではないっていう感じで。気になって探ってみたら、晴信の子でした。」


 この『晴信の子』とは四郎のことである。そう、山賊に絡まれていたところを四郎が助けた少女。その正体は今川の間者だったのだ。


「甲斐の虎の子か・・・。まさか正体ばれてないだろうな?」


「それはありません。おそらく彼は私のことをただの村娘だと思っているでしょう。」


 正体はばれていない。それを聞くと義元は安堵した。


「うむ。なら良い。しかし、ただ者ではないとは一体どういうことじゃ・・・?」


「うーん、上手く言えませんが・・・、貫禄が凄いって感じです。まだ若いのに威圧感がある・・・みたいな・・・?」


 少女は言葉に困った。彼の剣技をみたわけではないからだ。


「うむ・・・。なるほど。」


 しかし、義元にはしっかりと伝わった。なぜなら彼はそういった男を他に知っていたからだ。


「ふっ、面白い。よし、お前はそいつの元に潜り込め。」


「ハッ、おまかせください。」


 こうして四郎は思いの外早く、初恋の人と再会することになるのだった。

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