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最終話「乱世の終焉」

 浜松城の陥落は時間の問題であった。

 連戦連勝で勢いに乗る武田軍に対し、徳川軍の士気は著しく低い。

 これまで敗戦を重ねてきたのも大きいが、なにより昌幸の計略で多くの将兵らが武田に投降したことが大きかった。

 だが、そんな中でも最後まで家康に忠義を尽くさんとする者達もいた。

 その代表が徳川一の猛将・本多忠勝であった。


「戦況を覆すには敵総大将の首を取るしかあるまい……」


 目指すは総大将・武田勝頼の首のみ。

 忠勝は颯爽と駿馬にまたがり、武田本陣めがけて突撃を開始した。

 愛槍・蜻蛉切が数多の武田兵を屠っていく。

 その鬼神の如き忠勝の武勇に雑兵たちは恐怖し逃走、やがて本陣までの道ができた。


「武田勝頼……!覚悟!」


 すでに忠勝の目は武田の本陣をとらえていた。

 あと少し。忠勝は馬の腹を蹴り、さらに加速した。

 だが、その時。

 一本の矢が忠勝の頬をかすめた。


「皆のもの、全力で勝頼様をお守りするのだ!」


 気がつけば、忠勝は武田の将兵に囲まれていた。

 忠勝の後をついてきていた騎馬兵らはことごとく討ち取られ、無惨に地面に転がっている。


「ぬぅ、ここまでか……!」


 忠勝の刃が勝頼に届くことはなかった。






 忠勝の戦死により、完全に戦意を失った家康はやがて降伏、徳川家は滅亡した。

 一方その頃、賤ヶ岳の地で羽柴秀吉と柴田勝家が激突、秀吉が勝利した。

 よって畿内の覇権をめぐるのは武田勝頼と羽柴秀吉の二人のみとなった。

 そして両軍は関ヶ原の地で激突したのであった。


「この武田勝頼が、醜き戦乱の世に終止符を打つ!必ずやこの戦に勝利するぞ!」


 勝頼のこの言葉に武田の将兵らは奮い立った。

 戦は武田軍が終始圧倒、勝頼の完全勝利に終わった。

 京へと上った勝頼はやがて征夷大将軍に就任、ここに武田家による新たな幕府が誕生した。

 こうして、長きに渡った戦国時代は終焉を迎え、武田家による泰平の世が始まったのである。

 




 幕府誕生から10年もの歳月が流れた。

 勝頼はすでに息子の信勝に将軍位を譲っており、現在は隠居の身であった。

 髪と髭は白く染まり、身体は折れそうなほどに細い。もはやかつての勇ましい面影はなかった。

 勝頼は1年ほど前から体調を崩しており、近頃は布団から一人で起き上がれないほどに衰弱していた。

 そんな勝頼のもとに昌幸が見舞いにきた。

 その時、勝頼はこんなことを言い出した。


「昌幸、俺が死んだ後のことくれぐれも頼んだぞ……」


 勝頼は己の死期が近いことを悟っていたのだ。


「ハハ……殿、悪い冗談はやめてくだされ。それに、わしももはや老いぼれ。そういったことはもっと若い者に言うべきでしょう」


「フッ、たしかにそれもそうだな。では、お前の息子達にでも伝えておいてくれ」


 勝頼はそういうとガハハと豪快に笑って見せた。

 昌幸も釣られて笑う。

 しばらく二人で笑い合ったのち、勝頼はこう呟いた。


「笑うというのは楽しいな。俺は若いときにもっと笑えばよかったと近頃後悔している。あの頃は父上を越えることばかりに執着していたからな……。まあ、それが心の支えでもあったが……信勝には笑いを支えにしてほしいものよ」


 それが勝頼最後の言葉であった。

 翌日、勝頼が目を覚ますことはなかったのである。

無事完結いたしました!

ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。

また今度なにか別の歴史ものを書こうと思っているので、そのときはよろしくお願いします!

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