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第41話「甲州会戦 ~中編~」

 両軍はついに激突した。

 猛々しい雄たけびをあげ、兵士たちが刃を交える。

 ある者は槍で胴を貫かれ、またある者は弓や鉄砲で頭を撃ちぬかれた。

 そして瞬く間に戦場は血で赤く染まったのであった。

 今回の戦でも織田は鉄砲を使っている。だが、長篠の戦のような一方的な虐殺にはならなかった。

 それは現在織田が西の毛利をはじめとする多くの巨大勢力と戦っている中、弱小勢力に成り下がった武田にあえて長篠のような戦い方をする必要性がないからであった。

 また、長篠の戦のときは明智光秀という優れた指揮官がいた。だが、今回の戦に彼はいない。

 もし同じ戦法をとったとしても、長篠のようにうまくはいかないだろう。

 そこで、信忠は従来どおりの戦法をとることにした。

 兵力の差は歴然、物量で押しても十分に勝てると判断したのだ。

 実際戦況は徐々に織田方の優勢となっていた。

 なかでも、森長可の活躍は目覚しかった。


「我が名は森長可!武田は強者ばかりと聞いていたが、それも今や過去のこと。今の武田には脆弱者しかおらぬようだな!」


 織田軍の武将・森長可は大声で武田兵を挑発した。

 彼の手には立派な大槍。そう、彼は織田家を代表する猛将の一人で槍の名手と名高い、森可成(もりよしなり)の子であった。

 その可成は元亀元年の宇佐山城の戦いで壮絶な最期をむかえ、現在は長可が森家の当主である。

 もちろん長可も父に負けず劣らずの槍の名手であり、いままでに多くの戦功を挙げてきた。

 そしてこの戦でも既に数え切れぬほどの首を挙げていた。

 槍を軽々と振りまわし、大声で挑発を続ける長可。そんな彼に近づく一人の男がいた。


「ほう、なかなか言ってくれるな」


 男はそう言うと長可の前で槍を同じく軽々と振りまわし、高々に叫んだ。


「我が名は土屋昌恒(つちやまさつね)!森長可、お主に一騎打ちを申し込む!本当に武田家は脆弱者ばかりなのか、ご自身の目で確かめられよ!」


「ふん、やっと面白そうな奴が出てきたか!よかろう、相手になってやる!」


 こうして強者同士による壮絶な戦いが始まろうとしていた。





 一方、武田本陣では驚愕の知らせが届いていた。


「た、大変です!小山田信茂様ご謀反!この本陣にまっすぐ向かっております!」


「何!?」


 小山田信茂率いる投石部隊は精強であり、武田軍の要とも言える存在であった。だが、それが裏切ったとなればただでさえ悪い戦況は益々悪くなってしまう。

 勝頼は背中に冷たい嫌な汗が流れるのを感じた。


「クソ……信茂め!戦況不利とみて寝返ったか!もう少しで昌幸の策がなるというのに……!」


 ただ怒っていても仕方がない。

 勝頼はすぐさま信茂を迎え撃つ策を考える。

 だが、本陣に残るわずかな兵で信茂に対抗する策など皆無であった。


「むう……!」


 勝頼にはただ唸るしかできなかった。

 絶体絶命の危機である。これまでか、と思ったそのとき。

 勝頼にとって嬉しい誤算が起きた。


「勝頼様!援軍が到着しました!」


「何だと……!?」


 勝頼は上杉以外に援軍を頼んだ覚えはない。

 それもそのはず、上杉以外に今の武田の味方をしてくれる物好きなどいないだろう。


「誰だ……!一体誰なのだ……!」


 援軍として駆けつけたのは勝頼にとって、予想外の人物であった。

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