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第3話「上田原の戦い」

 天文17年2月1日、晴信は北信濃向けて進軍を開始した。しかし、そのためには猛吹雪の中、険しい大門峠を越えなければならず、武田軍は多大な兵員と武器・糧秣を失ってしまう。


「むう、かなり遅れてしまったわ。」


 武田軍が上田原に着いた頃には、とっくに村上軍は布陣を終えていた。


「武田軍が現れました!」


「おお!晴信め、やっと来たか!」


 村上本陣に武田軍出現の報が届く。それを受けた義清はほくそ笑んだ。


(長旅と慣れぬ大雪で奴らは疲れきっておるであろう。この戦、もらったわ!)


 2月14日、両者は激突した。


「ゆけ!村上なんぞ蹴散らしてしまえ!」


 武田軍先鋒の板垣隊が攻撃をしかける。


「うおおお!わしは板垣駿河守信方じゃ!死にたい奴はかかってこい!」


 信方は村上兵をバッサバッサと愛槍でなぎ倒して行く。しかし、合戦は集団で行うものだ。個人の力では限界がある。やがて、長旅の疲れのせいで士気の低い武田軍は押されていく。


「くっ!まだだ!押し返せ!」


 信方が必死に叫ぶが、逃げる兵が後を絶たない。


「いかん!甘利、板垣隊を救援せよ!」


「ハッ!」


 板垣隊の崩壊を防ぐため、晴信は甘利虎泰(あまりとらやす)を救援に向かわせる。


「爺、死なんでくれよ‥‥!」




「板垣殿!救援に‥‥!うっ‥‥!」


 救援に駆けつけた虎泰の見たもの、それは地に横たわる無惨な信方の姿であった。


「間に合わなかったか‥‥!」


 長年一緒に戦ってきた戦友の死に涙を流す虎泰。しかし、ここは戦場だ。嘆き悲しむ暇はない。気がつけば甘利隊は村上の大軍に囲まれていた。


「くそ‥‥!退け!」


 虎泰は撤退を指示した。しかしその時、無数の矢が虎泰を襲った。


「うぐっ‥‥!」


 大量の矢を受けた虎泰は力なくその場に倒れた。




「板垣信方様・甘利虎泰様、討ち死に!」


「な‥‥!」


 本陣にて重臣二人の死を聞いた晴信は驚きを隠せなかった。


「わしのせいか!わしが二人を死なせてしまったのか‥‥!」


 ようやく晴信は、自分が連戦連勝に驕り、傲慢になっていたことに気づいた。


「もしや爺はそのことを気づかせるために死んだのか‥‥!」


 信方・虎泰の他にも、初鹿野伝右衛門(はじかのでんうえもん)才間河内守(ざいまかわちのかみ)など多くの重臣が討ち死に。上田原の戦いは武田軍の大敗という結果に終わった。

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