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第16話「元服」

 信玄は川中島の戦いで多くのものを失った。だが、その代わりに得たものもある。それは信濃の支配権だ。

 永禄5年6月、信濃を円滑に治めるための政策の一つとして、信玄の四男・四郎が諏訪氏を継ぐこととなった。


「四郎、お主の名は今日より諏訪勝頼(すわかつより)だ。高遠城をまかせたぞ。」


「ハッ!必ずや父上の期待に応えて見せまする!」


 勝頼の返事は大きくハッキリとしていて、ただならぬ熱意を感じさせる。信玄はそんな息子の立派で頼もしい姿に思わず笑みを浮かべた。






 勝頼は跡部昌忠(あとべまさただ)ら8名の家臣団とともに高遠城に入城した。


「ここが俺の城か・・・。」


 勝頼は城を見渡す。決して広くはないが立派な城だ。勝頼はここでの新たな生活に心を躍らせた。

 そんな勝頼の興奮がまだ覚めぬ中、ある人物が勝頼に会うため高遠城にやってきた。

 その来訪者はなんと少女であった。黒く艶のある長髪を後ろで一つに束ねていて、とても美しい。


「勝頼様、お久しゅうございます。望月千代女です。」


 その少女の正体は甲賀望月氏のくノ一・千代女であった。

 彼女は、かつてした『勝頼が元服したら仕える』という約束を果たすためやってきたのだった。


「まさか本当に来るとは・・・。まあ、諏訪家の当主たる者、約束を守らないわけにはいかないな。千代女、これからよろしく頼む。」


「はいっ!この望月千代女、命に代えても勝頼様をお守りいたします!」


 くノ一・望月千代女を家臣団に加え、勝頼の高遠城での新しい日々が始まった。







 永禄6年、上野箕輪城へと進軍する一つの軍勢があった。風になびく軍旗には梶の葉の紋。梶の葉の紋にもいろいろと種類があるのだが、その紋は『諏訪梶の紋』であった。すなわち、その軍勢は諏訪軍であることを表す。

 諏訪軍の総大将は諏訪勝頼。現諏訪家当主であり、甲斐の虎・武田信玄の四男である。

 古風な甲冑に身を包み、その上に派手な陣羽織を羽織っている。馬は白馬で気品に満ちあふれていた。その威厳ある格好からまるで歴戦の戦士のように感じられるが実は今回の戦が彼にとって初陣であった。

 そしてその横では望月千代女が轡を並べている。今回、千代女は忍びとしてではなく、勝頼の副官として従軍していた。そのため、普段の忍び装束ではなく、白銀の西洋風の甲冑に身を包んでいた。その鎧は大胆に胸元が開いており、彼女の美しさをより一層際立たせている。

 千代女を副官に抜擢したのには2つ理由がある。

 一つは勝頼の家臣団の中の誰よりも軍略に長けていること。単純に副官に適していると判断したのだ。

 二つ目の理由としては千代女を近くで監視しておくためである。実は勝頼は千代女のことを少し疑っている。

 初恋の人物が実は忍びで仕官を求めてきた、というのはあまりにも出来すぎている。もしかしたら他国の間者かもしれない。

 勝頼としてはこの戦で本当に千代女が武田家・諏訪家に対して忠義心を持っているのかを確かめたかった。

 

「皆の者、幾度もの調略により箕輪城はすでに孤立しかけている!一気に攻め落とすぞ!」


 勝頼の初陣、上野箕輪城攻めがついに幕を開けた。

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