第13話「川中島の戦い ~前編~」
8月15日、政虎は兵5000を善光寺に置き、翌16日には残り1万3000の兵を率いて妻女山へと向かい、そこに陣を張った。
一方、武田軍は初め茶臼山に陣を張ったが、闇夜に紛れて千曲川を渡河、29日に海津城入城を果たす。
睨み合う両軍。なにも起きないまま、ただいたずらに時だけが流れていった。
「勘助、なにか良い策はないか。」
合戦が長引くことにより味方の士気が落ちることを恐れた信玄は、ついに決戦に踏み切ることを決意。しかし、相手は戦上手の政虎。策なしで勝てるほど楽な相手ではない。政虎を破るには何か画期的な策が必要であった。
「そうですな・・・。啄木鳥の戦法などいかがでしょう。まず兵を二手に分けまする。そして地形に詳しい高坂殿と飯富殿、馬場殿らが1万2000の兵を率い、夜陰に乗じて上杉本陣を急襲しまする。さすれば政虎は下山せざるおえない。そして8000の本隊は八幡原に陣を張り、下山してきた上杉軍を迎え撃つ・・・!前に8000、背後に1万2000。さすがの政虎もこれでおしまいよ・・・!」
隻眼の軍師は渾身の策を述べると、ニヤリと笑みを浮かべた。
「ふむ、啄木鳥か・・・!さすが勘助じゃ!素晴らしい!それで行こう!」
9月9日、武田軍が動いた。
「む・・・!」
一方、上杉本陣。政虎は海津城を見て、違和感を覚えた。
「定満、海津城を見てみよ。夕餉の煙がいつにもまして多くはないか・・・?」
「ま、まさか・・・!啄木鳥・・・!?」
些細な変化。しかし政虎は見逃さなかった。そして上杉軍の軍師・宇佐美定満は、齢70を超える。いままで数多の戦場を駆けてきた。だからこそ、武田が啄木鳥の戦法を仕掛けようとしていることを瞬時に見抜くことが出来た。
「よし、直ちに下山する!刀や槍の穂先は光らないよう土などで汚し、馬には枚を噛ませるよう兵達に伝えよ!決して移動を敵に悟られてはならぬ!」
「ハッ!」
啄木鳥の戦法を見破った上杉軍は下山を開始、武田軍に気づかれることなく、八幡原に陣を張った。
「ふっ・・・!信玄よ!貴様はここで終わりだ!!!」
9月10日早朝、濃霧の中、武田本隊8000と上杉軍1万3000は激突した。武田軍は鶴翼の陣という一般的な陣形なのに対し、上杉軍は車懸りの陣という珍しい陣形であった。
「啄木鳥を見破るとは・・・!政虎め、なかなかやってくれるわ・・・!」
信玄の額に汗が流れる。
「申し訳ありませぬ!それがしのせいで・・・!」
策を立てた張本人である勘助が頭を下げる。しかし、信玄は勘助を叱らなかった。
「よい、それよりも早く次の策を立てよ。」
「ハッ!必ずや挽回して見せまする!」
川中島の戦い前半は上杉軍優勢で進んでいた。
新年明けましておめでとうございます。
2015年の目標は「勝頼の出番を増やすこと」です(笑)
主人公なのにいままでほとんど出てませんからね(笑)
次回第14話は川中島の戦いの続きです。
なるべく早く投稿できるよう努力します。
それでは今年も『武田勝頼 ~戦国最強の父を超えよ~』をどうかよろしくお願いいたします!