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廊下の窓から見ると、朝方とは違い、霧はだいぶ晴れていた。
「こちらは収納室になります」
「収納室ですか」
僕は言った。
「ええ。作成されてからかなりの年月が経ったものをここに仕舞っております。日光に弱い物もありますので」
扉を開けると少し埃が舞う。中には大小さまざまの剥製が置かれてあるが、一番多いのは狼だ。今にも襲いかかってきそうな出来だ。
「やはり狼ですか」
「そうですね。代々の城主が頻繁に狩りに出たそうですから」
「なるほど」
僕がそう言って辺りを見回すと、剥製の奥に布が掛けられたケースが見えた。
「あれは何ですか?」
「はい。球体関節人形が収められているのですが、何分にも年代物なので状態がひどく、あまり見目のいい物ではありませんので、あのようにしているのです」
「そうですか……」
「……ええ。あの人形は、先々代の城主が腕のいい人形師に造らせた物ということもあり、処分できないとのことだそうです」
「古い物、なのですね」
「はい」
「人に見せることのできない代物なのかもしれませんが、骨董的価値はありそうですね。たとえば、熱心な蒐集家に買い手が付きそうな……」
僕は従僕を見た。彼はケースを見ながら「そうかもしれません」と答えた。




