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かおすぶ  作者: 王蠱
1/2

1話

オリジナル作品初投稿。

暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。

「で、本題の今年の活動計画について何か意見ある者、いるか?」

促すような部長の言葉にしかし手を上げる者は誰もいない。

テーブルを囲むように座った部員達は皆一様にめんどくさそうな目を前方、

『○○年度科学部活動計画』と白のチョークで書かれた黒板を眺めるだけ。

「部長、それって絶対に決めなきゃなんないんですか?ってか、去年決めた記憶がないんですけど」

確認する副部長の金崎夕かなさき ゆうにもだが部長は首を横に振る。

「去年というか一昨年もその前も、生徒会の記録によると科学部(うち)

もうここ十年くらい提出してないらしい」

「は?」

「それで歴代の部長どものツケが遂に回ってきてな。

まったく、せめてあと少しだけ待ってくれれば・・・」

チラ、と後輩たちを横目で見る部長。レンズ越しの視線に込められた内心は

しかし直前の言葉と絡み合って恐ろしいくらい正確に伝わる。

『せめてあと少しだけ待ってくれれば、こいつらに全部押し付けられたのに』

面倒は解決するより起こす方が楽しい、と常に言ってはばからない彼女の性格を

理解できてしまえていることに他の部員たちはそれぞれ疲れたような息を漏らす。

「まぁ来てしまったものは仕方がない。とにかく決めよう。

生徒会の方にもさっさと提出しないと廃部だと脅されてるんでな」

「は、廃部ですか・・・?」

おずおずと、という言葉がぴったりな感じで小さく質問の挙手をしたのは

後輩の一人、凪山(なぎやま)京音(きょうね)だ。

病的一歩手前とでも表すべき白さの肌を制服の端から覗かせる彼女のそんな声にも

だが部長――竹宮(たけみや)島流(とうる)は「そう」と豪気な笑みを浮かべるだけだ。

「最初呼び出された時の脅し文句は今年度の活動予算ゼロ、って話だったんだが

それじゃちょっとやる気が起きないんでな。挑発しまくって廃部の危機を作ってきた!」

勝ち誇るように親指をグッ!と立てる島流。

「あ、あんたなに考えんですか一体?!なんでわざわざリスク上げるような真似してんですか!?」

「ちなみに廃部の場合、今年度使われるはずだった科学部の予算は校舎の修繕費・・・

などを経由して最終的に私のポケットマネーになる」

「この人自分の部潰す気まんまん?!」

「コウ、少し落ち着きなさいん」

必死にツッコむ支倉(はせくら)幸一(こういち)と、そんな彼をなだめる支倉(つばめ)

双子の姉弟をしばし面白そうに観察していた島流だったが

「とにもかくにも、あと45分以内に提出しないと廃部だから、科学部(ここ)

「「「「45分!?」」」」

夕と後輩トリオはぎょっとして壁にかけられた時計を見やった。

現在時刻PM3:15。4時までに立案・提出しなければ部活消滅。

この場の誰も普段はそれほど熱心に部活に臨むメンツではなかったのだが


「「「「さっさと決めましょう!」」」」


切羽詰まった現状に何か動かされたのか、頭を抱え出した同級生と後輩たちを島流は

意地の悪そうな顔のままみつめる。



「年間通しての計画だからなー?簡単な実験の短発とかじゃなくて複雑でも

時間のかかんの出来るだけ頼むぜ」

「はい部長!思いつきました!」

まず手を上げたのは夕だった。現在2年生2名、1年生3名のこの部において

昨年度からの付き合いである彼は現メンバーの中で最も部長のツボ(・・)を熟知している。


「錬金術がやりたいです!」

「はい決定」


「「「って待て待て待て!」」」

即効で書類に『鎌金術』とだけ書いて出ていこうとする島流を後輩トリオは呼びとめる。

「ん?お前らなにか不満でもあるのか?」

「不満というかむしろ不安しかないんだよこのダメ部長!」

立ち上がった幸一は部室と廊下を隔てる引き戸の前に仁王立ちして部長の退室を防ぐ。

科学部の部室たる第二科学室は校舎三階の廊下のどんづまりに位置し、

廊下に出れる扉はひとつしかない。長方形の部屋のうち黒板から見て両サイドの壁は

薬品や実験器具の収納スペース、そして正面は採光の為かほぼ壁一面が窓になっているという造り。

要はこの唯一の出入り口さえ押さえてしまえば誰も外には出れない。

「何が不安なんだよ?せいぜい石ころ(きん)に変えたり賢者の石創ったり

人工生命体(ホムンクルス)誕生させるくらいの

ものすごく地味で堅実な研究のどこに不安要素がある?」

「今あんたの言ったこと全部!」

ビシィ!!と突きつけられた人差し指はだが見ようともせず、

島流は突破の隙を窺うように体を左右に小さく揺らす。

「副部長もなんでこんな突拍子のない提案を・・・?」

「いやさ、この人これくらいのこと言わないと納得してくれないから」

京音の疑問に悪気なく頭をかきながら返す夕。

「そりゃ現実的な案だっていくつかあるよ?

天体観測とか河川の水質調査とか、あと機械的なもの作るとか」

「?じゃあなんでそれを言わないん?」

「だから、あの人の意識を誘導するにしても手順があるってこと。

具体的に言うと、最初の無茶ぶりで思い切り引き付けて、

そこから徐々にハードルを下げてくように仕向ける」

「それ、なんの意味があるん?」

「少なくともあの人の・・・」

と、そこまで夕が言ったところで。


「ちょ、ちょっと待ったぶちょ・・・!?」


慌てるような幸一の声。身を寄せてひそひそと小声で話していた三人はなにごとかと一世に顔をあげ。


「じゃ、ちょっと提出してくるから」


ガラッ。カツ。バっ!

そんな三つの動作音に続いて部長の影が落下していくのが見えた。窓ガラスの向こう側に。

「「「「・・・」」」」

残された4人は自体の意味を思考することもままならなかったが、数分後。

ガラガラガラ・・・


「ただいまー。なんかオカルト研に吸収されることになったわ、科学部(うち)


幸一の守っていた扉から入ってきた島流は、特になんの感慨もなさそうにそう告げたのだった。


プロフィール

竹宮島流たけみや とうる

性別:女

年齢:17歳(高校2年生)

所属:科学部(1話現在)

役職:部長(1話現在)

好きなもの:無茶、混沌、刺激的な事象全て

嫌いなもの:退屈、ありきたりなこと

とにかくカオスなことが大好きな科学部部長。

知力・身体能力とも人並み外れている上

実家は金持ちという超人だが、それを補ってあまりあるくらいの変人。

ちなみに着用しているのは伊達メガネで、視力は両目とも

サンコンさん並みで測定不可能。



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