俺の生い立ち
俺は人口60億人いると言われる地球の中でもとりわけ空っぽな人間だと言う事を自負している。
「馬鹿言ってんじゃねえ!そんなわけあるか!俺の方が何もねえ!」って思う奴もいるだろうが安心しろ、絶対俺の方が無い。
小さい頃からピアノだテニスだスイミングだと習って来たが身になった形跡がない。
全部途中で飽きて放り出したのだ。
小学生の時は面白くもねー習いごとに日々追われる毎日だった。
中学生になってからは全部やめて、とりあえず入った陸上部も面白くねーから1日でやめた。
もちろん、こんな中途半端なやつが勉強もできるわけでもなく成績はいつも中の下。
高校受験の時に担任に
「公立はまず無理だと思った方がよいでしょう」
と三面で言われおかんが泣き崩れた。
「うちに私立行かせる金があると思ってんのか!公立に落ちたら家出てってもらうからな!」
とおかんからの強h…叱咤激励もあり、俺は勉強した。
そして何とか地元の公立高校に入学できた。マジ奇跡だった。
入学したらしたで最初の定期テストで赤を取った。
その後の三面で担任に
「このままいったら留年か退学でしょう」
と言われおかんが泣き崩れた。
「うちに留年させる金があると思ってんのか!ダブったらそのチャラチャラした髪の毛刈って炭鉱に送りつけるからな!」
とおかんからの強h…叱咤激励もあり、俺はまた勉強した。
そして何とか次の定期試験で平均以上をとり、留年の危機は免れた。マジ奇跡だった。
その後の俺はこの時ではないにせよそこそこ勉強するようになった。
流石に同じ轍を3度も踏むような真似はしないさ。
地域でもバカ校で通っているだけあって、俺くらいの頭でも常に中の上になる事が出来た。
最初のうちはそれが嬉しくて結構勉強したんだぜ?
でも途中で俺がどんなに頑張ってもトップになる事は出来ないと悟って『そこそこ』の勉強しかしなくなった。
なぜ諦めたかって?
自分の身の丈に合わないハイレベル高校に挑んだ結果、無残に散って行き場の無くなった頭のいい奴らが定員割れしていたこの学校に入学していた事に気付いたからさ。
どんなに頑張っても俺はこいつらに敵いっこない。そう気づいたんだ。
まったくもうちょっと頑張ってくれよ、お前らならもっと上にいけるだろ、そう思った。思った所でしょうがないとも思った。
それから俺は密かに目指していた「学年主席」の夢も諦めた。
そして退学にならない程度の「遊び」に手を出し始めた。
まあ最初の頃は夜中にダチとつるんでゲーセン行ったりするくらいだったさ。
だけど2年くらいになると喧嘩したりケンカしたりけんかしたりするようになっていった。
こういう風に言うと「関東1強くなったの?」とか「県制覇とか?」って思うかもしれないがそう思った奴はマンガの読みすぎだ。
ケンカ、しかも高校生同士の遊びみてーなケンカに「関東1」だの「県制覇」だのなんてそれなんて運動部?
そんなトップ目指す気力があるなら最初っから陸上部で日本1を目指す爽やかスポーツ少年にでもなってたっつーの。
つるんでたダチだってそこまで仲が良かったかって言われると疑わしい。
ある日急にラーメンが食べたくてダチの一人に電話した事がある。そしたらそいつなんて言ったと思う?
「俺今ポ●モンで忙しいから無理」
だぜ?
「俺はピ●チュー以下か」
って言ったら
「今はピ●チューじゃねえよ。チ●リータだ」
って言われた。うん、ポ●モン面白いよな。でもその時の俺は面白くなかったから電話をぶった切ってやった。
それから俺は何をやっても面白くなかった。
女遊びも経験したしまあアルコールや煙草もちょちょいってやったことも無きにしも非ずだ。
だけどやっぱり満たされなかった。
俺には何もない。
いつもそう思っていた。
俺より頭いい奴バカなやつ、年上年下、男女…みんなみんな何かしら持っているのに俺だけ何もない気がした。
心には何時も満たされない思いでいっぱいだった。
自分はどこから来た?何をしなければならない?何がしたい?何ができる?自分は何者だ?
答えは出なかった。
そんなことで悩んでいるうちに俺は3年になっていた。
おかしい。昨日入学したばかりなのにまた進路に悩む時期がきているぞ?
俺は進路調査票を渡されても何も書けなかった。
自分にはやりたい事も成すべき事も何もない。
しばらく考え、俺は親に勧められた近所の私立大学に奨学金で入る事にした。
学部も一番入りやすい所を選んだ。全然興味のかけらもない学部だった。
そこそこ勉強していたおかげで、推薦も奨学金ももらえる事になった。
早々に進路が決まった俺を周りのやつらは恨めしがったが俺は全然嬉しくなかった。
行きたい大学でもなく学びたい学部でもない。なんてつまらない男なんだ俺は。
そして遊んでばかりいた高校3年間はあっという間に過ぎ、俺は大学生になった。