0: 始まりは終わりから
カテゴリが恋愛となってますが、恋愛要素は左程強くはありません。
(該当のカテゴリの判定が難しくて、選びました)
展開も王道を目指します。
それでもよければ、どうかお読み下さい。
※本来それなりに長い話になりますが、とりあず今回は区切りの良い所で一旦完結させるつもりです。
なので、全20話程度の話になると思います。
ゴトンゴトン。
数時間前からずっとその音だけしか聞いてない。
何の音かって?
車が地面を飛び跳ねる音に決まってる。
ああ、忘れてた。
ゴトン以外にも、エンジン音は聞えてた。
…………だから何という訳じゃないけれど。
流石に――――おかし過ぎる。
そんな事はわたしにだって分かる。
クラクションは元より、すれ違う車の音さえ聞えないなんて。
一体、わたしはどこに連れて行かれているのだろう……?
なんて言うのも、アイツらにいきなり縄で縛られたかと思ったら、次に待ち構えていたのは箱の中。
わたしは、そんな状況に置かれていた。
…………簡単に言うと、箱詰めされた、とも言う。
明かりも微かにしか射して来ない暗い箱の中で、外の様子は全く確認できないけど、どこかに運び込まれたことだけは分かった。
乱暴に置かれた所為で、したたかにお尻を打つ事になったからね。
わたしの身長は百六五センチ程度だから、女性にしてはまあ普通より高い方だと思う。
とりあえず、そのあたしが足を伸ばせる位には、箱の中は広い。
という事は単純に考えて、詰め込まれたのはトラックなのだと推測できる。
軽なのか、大型なのかは分からないけど。
手荷物類は、縛られた時に取り上げられたから、携帯で助けを呼ぶなんてことは出来ない。
幸いな事に? 猿轡はされなかったので叫ぶ事だけは出来る……けど、幾ら叫んでも事態は全く好転しなかった。
だから、今はもう疲れ果てて、その気も失せてしまった。
何故わたしが? という思いが込み上げて止まない。
金も無ければ……悔しいけど美貌もないからね!
…………言っててヘコむ。
それと同時に情けなさも込み上げてくる。
わたしは決意した筈なんだ。
絶対に、以前のわたしから変わってやるって。
あんな出来事があって、ようやくわたしはそう思えるようになった。
それまでの、主体性の無い、ただ人に命令される毎日を生きていただけのアタシから。
自分の目で見て、自分で考えて、自分で決める――――そんなわたしに。
それを教えてくれた奴らの為に、わたしは絶対にそうなると決めたんだ。
――――決めたんだけど、それがこの有様って…………。
それは情けなくもなるってもんでしょ?
変わろうと思って踏み出した、最初の一歩が――――この状況よ?
「はぁ……」
溜息は、これで何度目だろう。
暇だから数えてたけど、あまりにも数が多すぎて、面倒になっていつの間にか止めていた。
「…………お腹すいたなぁ」
こんな状況でも、お腹は空く。
それが分かって、少しだけわたしはおかしくなった。
何か色々麻痺しちゃってるのかもしれない。
「……ん?」
今、何か感覚が――――
バタン。と、突然扉の閉まるような音が聞えてきた。
慌てて耳を済ませると、いつの間にかエンジン音も止まっていたのが分かった。
どうやら、目的地に到着したらしい。
「やっと……」
着いたって、喜んでばかりもいられない。
よく考えたら、これは人を攫っちゃうような悪の組織の本拠地に着いたってことだ。
何の目的でわたしを攫ったのか。
一体、どんな奴が出てくるのか。
なんて考えていたら、ふと以前の上司の顔が脳裏に浮かんだ。
――――まさか。
そんな訳はない……よね?
折角、逃げだした場所に逆戻り…………なんて事は。
でも――――ありうる。
って、ありうるどころか……ストライクじゃない!!
ああ!! 何でアタシはその事を考えなかったの!?
よく考えたら、アタシを攫う可能性があるのは、あの人たちだけじゃないの!
どんだけ平和ボケしてたの、アタシ!?
ああ……自分を殴りたいっ!!
――――まあ、それは痛いからやらないけど。
くそっ。
でも、ただでやられるアタシじゃないわよ。
少なくともあのクソ上司だけは、返り討ちにしてやるんだから!!
なんて考えていたら、不意に体が宙に浮いた感覚が伝わってきた。
箱を持ち上げられたんだ。
どうやら運び出す気らしい。
よぉし。やってやる。
絶対、ただではやられないからね!
――――と、決心したのも束の間。
「ふへっ? あちょっ!」
突然、天地がグルリと回転した。
その直後に、衝撃が襲ってくる。
「ぐふっ!!」
恐らく途中で箱を放したんだろう。
背中の方から地面に落下する。
その反動で足が浮いて――――箱を蹴り破ってしまったらしい。
アタシは後転の要領で箱から飛び出す事になった。
「あいたたたた……」
まずはとりあえず、背中を押さえたかったが、腕は縛られているのでどうしようもない。
何とか痛みが治まるまで待って、ゆっくりと視線を上げる。
すると、目が眩む程の明かりが視界に入ってきた。
ずっと暗闇の中にいたからだろう。
眩しさに思わず目を瞑り、繋がれた両手を翳して影を作る。
十数秒間待ってから、恐る恐る閉じていた瞳を開いていく。
そして、強引にこんな所まで連れて来やがった連中の顔を、しかと見届けるつもりで、アタシは静かに手を退けた――――
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