日夏利、僕の恋人
気がつくとそこは病室であった。
「……」
取り敢えず、生きてはいるようだ。手を動かしてみると何やら点滴の針が刺さっているのが解る。あんまり、良い気分ではないな。起きようと体を起こしてみる。
「イタッ」
背中に激痛が走り起きようにも起きられない。声から察するにあれから偶数日経っているらしいつまり今はルミである。
首を動かして周りを見てみると今は誰も居ないみたいだ。テーブルの上に本が置いてあり、題名は…
「僕とLの奇跡…?」
…なっ!?何でこれが此処にあるんだ?!つうか、誰だ?!これを持ってきた奴は!?
等という思考を走らせていると扉が開き、黒髪黒目のツイテールが入ってきた。
「え?…る、ルミ!!?」
人の名前を叫び、持っていた物を床に散乱させ抱きついてきた…
「イッタアア!!!」
激痛、さっき以上の激痛が走った。
「アッ!ゴメン。大丈夫?」
「大丈夫だったら痛がらない。」
「んもう、人が折角心配して上げてるのに何でそう突っかかるの?」
「……」
お面を見て以来、弥美を見ているとちらつくヒカリさんの姿。如何したんだろ?ボク。
「おんやぁ?目が覚めましたか?龍炎さん。」
久々に聴くあの人の声。
「大岩さん。何か用ですか?」
「ナッハッハ~、いやぁ、取り敢えず、貴方がぼこしてくれたお陰、被害者たちが話してくれましたよ。二年前の事。」
「……そうですか。」
「おんやぁ?聞きたくないんですか?狙撃を指示した犯人の事。」
「あの二人の片方でしょ?」
「あらら、何か言っちゃってましたか。」
「あぁ、また大事な人が殺されるのが恐いか、だと。」
「それってこの中のLって人?」
そう言い弥美はあの疑問の本を持ち出した。
「何でそれが此処にある?」
「何ででしょうねぇ?」
等と惚けた事言う大岩さん。
「答えなさいよ!これ何なのよ!」
「一人称日記型恋愛話。」
「で、誰なのよ?LってついでにDも!」
「Lはライト、つまり光。Dはダーク、つまり闇、闇はお前。」
「だから、光って誰よ?」
「……黙秘権を行使する。」
「…そんなに背中を叩かれたいの?」
「そこに書いてあるとおり。」
「だから、死に際の言葉についてよ!『Dを守って』って如何いう事よ?あたしそんな人知らない!」
「良いんですか?言わなくて。」
「どうせ知ったって意味ないし。」
「…良し、果物ナイフでサクッと。」
何でこの姉妹は言いたくない事でも乱暴に吐かせようとするんだ?
「…はぁ、姉は品乳で、頭は良いけど、妹は胸にバッカいって馬鹿だし、何なんかなぁこの姉妹。」
「龍炎さん、声に出てますよ。」
「……え?」
弥美を見るとワナワナと震えている。
…あれ?若しかしてボク、ヤバイ事言っちゃったかな?
「誰が馬鹿なのよ!?誰が胸にバッカ行ってるんですって!?」
……オーバーキル確定。
数分後ボクは三時間ほど夢の旅に出かけた。
「で、姉って誰よ?」
…本当に馬鹿だ。
「日夏利さんですよ。知らないのは、親父さんが再婚する前に孤児院に預けたから。ですよね?龍炎さん。」
「なんで、ルミに確認するのよ。」
「だから、その本書いてある事は全て事実なんだって。何か小遣い稼ぎになるかなって感じで出した本だけどな。」
「取り敢えず売れましたよね?これ。」
そうそう予想に反して売れちゃったな。これ。
「ていうか、何でその事黙ってたのよ。」
「ヒカリさんに言うなって言われてたからに決まってるだろ?」
後、何かややこしい事になりそうだったし。
「ねえ、それ知ってて反対しなかったの?」
「いや、似てるなぁとは思ってたけど。まさか、姉妹とは思わなかったよ。」
マジ話、まぁ、事実を聞いても似てるからそれほど驚かなかったけどな。
「で?」
「で?って何が?」
「その本の印税たんまり貰ったんじゃないの?」
「あ、それは…ちょっとな。」
相棒の修理に使ったなんて言える訳ないし。
「そういえば、ヒカリさんのバイクって如何したんですか?」
「……」
やべえ、変な汗出てきたぁ。
「バイク?」
「えぇ、確か、龍炎さんも乗ってましたよね?真っ黒く塗装した改造バイク。愛称が…確か『死神の鎌』でしたよね?あれって何処に仕舞ったんですか?」
「そんな物うちにありませんよ?」
「地下室って調べましたか?」
「…え?地下室?」
大岩さん、後で闇討ちしますよ。
「地下室って何よ?」
「…退院してからな。」
「ヌ~。」
弥美のふくれっ面を見ながら何を整理しようか思案し。
「お前が人の仕事場、荒らさないとは限らねえだろ?」
と反論しといた。
「何よ?荒らされちゃ不味い物でもあるの?」
「あるかもな。」
「ところで、龍炎さん、そろそろ普通に呼んでもらえませんかね?」
「自分から渡したんですよ?あの誤植名刺。」
「良いじゃないですか?警戒心を解いてもらうための物なんですからぁ。」
「それ言っちゃって良いんですか?」
「良いんですよ少なくとも貴方方なら。」
まぁ、そうかもしれないが…この人ホント警察官なのか?名前的にも興宮署のあの人っぽいし。
等という会話をしていると先生ぽい人がやってきて、精密検査をし始めた。どうやら、今日を含めて三日間ほど寝てたらしくその間に弥美と見舞いに来たドクターから事情を聞いたらしく何も言わずに仕事をしていった。
「ふむぅ、それにしても面白い博士ですね。」
「単なるエロ野郎ですよ。」
弥美が少しイラつきながら答えた。
「?何故この人が怒ってるんですか?」
「弥美の母方の叔父なんで。」
「成る程。」
等と他愛も無い話しをし二人は帰っていった。
深夜、妙な気配がしたので起きると拳銃を向ける茶色の短髪の男性が居た。
「沖田、見舞いに来るには物騒な物持ってるな。」
「見舞い?んなぁ、たいそうな事はしませんぜぇ、単に見納めって事でさぁ。」
そう言い、沖田はその銃の引き金を引いた。
バァアン
銃声と共に銃口から花が舞った。
「で、そんな挨拶と共に何の用かな?」
「つれないでさぁ。死神さん。まぁ、用と言うほどの用でもないんでさぁ。」
そう言い、花の飛び出た銃を懐に仕舞い近くの椅子に座った。
「それで、用というのは、戻ってきてくれないかって事でさぁ。」
「言っただろ?俺はあの人が居たからそこに居たんだって。だから、あの人の居ないあそこは俺にとっては如何でも良いものなんだ。土方に任せておけば良いんだよ、土方に。」
「あの男の下で働く何ざ嫌でさぁ。」
「だったら抜ければ良い。」
「それも少し嫌なんでさぁ。それと、あの人が守ってきた者を守らねばならない。あんたとは違う考えで俺はあそこに居るんでさぁ。」
「たくぅ、少し我慢するか、闇討ちして土方から奪っちゃえば良いんだよ。」
「あのなぁ、少しばかり穏便に行かなきゃ、俺はぁアンタと違い臆病なんでさ。」
「臆病ね。まぁ、少しばかり我慢してろ。そしてりゃ、少しは悪くないとは思えてくると思うぞ。」
「…へいへい、そうしますよ。ところで、死神さん。」
「ん?」
「名前、その姿には似合いませんぜぇ、可愛いくしたほうが良いですぜ。」
「大きなお世話だ。」
「そうですか。」
等と言い、沖田は手を上げ去っていった。
「何しにきたんだ?あのサディスト。」
共通点がありすぎるという理由であんな名前付けたボクが言うのもなんだがな。
「新撰組…ある漫画キャラクターにそっくりの副長と隊長が居る為そう名づけた。フ~、俺はマヨネーズ好きじゃねえぞ。ヘビースモーカーは認めるが。」
「土方、此処病院だぞ?」
「良いじゃねえか手前だって吸ってたんだからな。」
「アレは昔の事だ。」
「二、三年程前の事だろうが。」
「良いじゃないか。それくらい昔だって事だよ。」
「たくぅ、人が折角心配で見てやりにきったてのによぉ。」
「沖田の後を付いて来ただけじゃねえのか?」
そう突っ込みを入れると土方は煙草を咳き込み始めた。
「たっく、察しが良いですな、死神さんよぉ。」
「で、お前は何の用だ?」
「用無し、単に見舞いだ。煙草吸うか?」
「病人に吸わそうと思うなよ。」
「病人つったて単に背中刺されただけだろ?あの時よりはマシだろ?」
あの時、それは朴の目の前で大事な人が僕を庇って撃たれた時の事。その時僕は死神よりも最悪な存在に変わり、その場に居た敵を皆殺しに仕掛けた、勿論誰も死亡していない。でなければ、大岩さんの弁明が会ったとしてもこんなところには居やしない。
「まぁ、あんたなら地獄の底からでも這い上がってくるだろうな。私怨の為なら。」
「悪いがもう、恨みで人を殺しかけたりはしない。二度と、な。」
「そうかい。んじゃ、俺は退散するぞ。」
「あぁ、他の奴等によろしくな。」
「へいへい。」
そう言い、土方は去っていき、静かな夜となった。