文化祭
その前にも体育祭があったのだがまぁ、それは普通に終わった事だしどうでも良い。普通に終わったと言うのはルミでやったわけではないので誰もが憤慨をしていたがまぁこの際は如何でも良い、今回話すのは僕にとって今年最大の厄災である。
「では、今回の文化祭のクラスの出し物は喫茶店と言う事で良いですね。続いては分担について決めたいと思います。」
「はい、とりあえず無条件でリュウを表に出す事に賛成します。」
『出来ればメイドで!』
男子の大半がそう宣言する。
「待て、何故そうなる?」
「フッフッフ、リュウよ。もう二度と体育祭の二の舞はふませないぞ。」
「そんなにルミの走る姿が見たかったのか。」
「そしてそれを売り捌く!!!」
「…殺して良いか?」
「まぁまぁ、ですがその日はそうなっているのですか?」
「ふっ、俺の計算に狂いは無い!その日は絶対ルミちゃんdグワフッ!!?」
大きめの辞書を武井の側頭部に命中させる。
「お前にだけはちゃん付けされたくないだとルミが。」
「えっと、とりあえず賛成の人は?」
クラスの大半の手を上げた。まぁ予想が出来てたから大声を上げなかった。
「えっと、リュウはそれで良いかな?」
「…まぁ、良いぞ。」
クラス中から歓喜の声が上がった。
「だが、一つ条件がある。」
『え?』
それだけ言い席を立ち黒板に向かいその条件を書き出す。
カメラ持参、五百円
撮影一回、二千円(ルミ撮影五千。微妙に入れた場合は三千。)
ビデオカメラ、六千
隠し撮り、捕まえた時点で一万
支持されての撮影は支持した奴から十万(武井の場合は五十万×指示をした人数分。)
「これをメニューに入れてもらいます。出なければ僕は裏方に回ります。」
クラス中から不満の声が垂れる。
「…よし、今不満言った奴等前に出ろ殴り飛ばしてやる。」
『異議ありませーん。』
「最初からそうしておけ。とりあえずこれでも譲歩してる方だぞ。」
『これで譲歩なんですか?大佐。』
「まあ、そうだ隠し撮りは十万取っても良い物なんだぞ。」
『横暴だね。』
「如何とでも言え。」
とりあえずこうしないと暴動が起きそうだったしな。
「ところでさ、リュウ、お前大丈夫が?」
「何が?」
「メイド服。」
…な!?それを忘れていた!?
「……何とかなると思う。」
「絶対忘れてたよな?」
「いや、全然。」
昼休み時
「メイド服、何でそんな物を忘れていたんだ僕はぁ…」
「やっぱり忘れていたんか。」
「通りで可笑しいと思った。着るにしては譲歩しすぎだなぁと思ってたのよ。」
「はぁ、まぁ良いや。」
「良いのかよ。」
「ん~、ルミちゃんがメイド服着たら…私抱きついちゃうかもね。」
「ミーシャ、そんな事したら理性が吹き飛ぶ。」
「アハハハ、吹き飛んじゃえー♪」
…何か途轍もなく頭を撫でたくなる。
で、次の日の放課後。
「…早いな、準備するの。」
「ヘヘエン、リュウ君にはメイド道を教え込まなければならないのだよ!」
「凄く、現実では役に立ちそうに無いな。」
「その前に言葉遣いをどうにかしなくては。」
「……あぁ、それ多分大丈夫だと思うぞ。」
「?如何いう事?」
それだけ答え、教室の柱に頭を思いっきりぶつける。
『!!?』
精神ルミ化。
「…やっぱり、これ痛い。」
「ルミちゃん?何してるの?」
「だから言ったよね?それ大丈夫って。」
『?』
クラス全員が首を傾げる。
ワタシはそれをみてクスリと笑い。
「そんなに可笑しいですかね?今の行動って。」
『……』
一瞬にして言動が変わったので唖然とする皆さん。
ん~、そんなに可笑しいのかな?
「あの、そろそろ始めないと時間なくなっちゃうよ?」
「あ、そうだね。…ていうか、リュウ君上手いじゃない。」
その言葉にワタシはクスリと笑う。
「残念ながら、ワタシは流巳では無いよ。正真正銘のルミだよ。」
「ハ?」
「えっと、つまりルミちゃんの人格っていう事?」
「えぇ、そういう事だよ。」
そう言い微笑むと皆さんはたじろぐ。
「そんなに可笑しいかな?」
コクコクと頷くクラスの皆様。
「フムゥ、如何したら慣れていただけるのかなぁ?」
ポニテの毛先をくるくる回しながら考える。
その後、直ぐに計画変更しワタシのメイド化が始まったのだけど。
「…何かやる気がなくなってきた。」
「?何でですか?お嬢様。」
敬語で尋ねてみる。
「上手すぎるんだもん!!これじゃ教える気なくなってくるのよ!」
「そう言いましても、ワタシはリュウ君とは違い元から女の子ですし。可笑しな恥ずかしさはありませんから。」
「ムゥ、口答えする子はお仕置きだよ!」
「横暴ですよお嬢様。ワタシは正論を言ったまでですよ。」
「むぅ、お仕置きお仕置きよ!罰として文化祭はネコミミ着用!」
「フエ!?それは嫌です。それをやるのならメニュー表の金額上げますよ。」
『それだけで良いんだ。』
「全メニューの金額ですよ。」
『それはやりすぎだぁ!』
「でも、馬鹿な男連中はウジャウジャやって来ますよ。」
『この人、自分の中のもう一人が男である事忘れてるよ。』
「リュウ君は馬鹿ではありませんよ。」
で、その後やる気をなくしたフレイちゃんは復活しなかったので。
「じゃぁ、そろそろ帰りますねー。」
ワタシはそう言い、壁に頭をぶつけた。
精神流巳化
「…あれ?ボク何時間ルミになってたんだ?」
『かれこれ二時間ほど。』
「おぉ。で、普礼は何落ち込んでるんだ?」
「もう一人の自分に聞いてみて。」
「?まぁ、そうするわ。で、何でこんなのがついているんだ?」
カチューシャのほかに違和感を感じたので触ってみた所ネコミミであった。
「まぁ、諸事情だ。」
其れから数日が経ち、文化祭を三日後に控えた朝の事。
「ん?手紙?」
ポストの中に一通の手紙が入っていた。
「まぁ、後で確認しよう。」
と、考え学校に向かった。
で、学校に着き、手紙の内容を確認し僕は固まった。
「如何したの?」
「……リュウ君へ、お姉ちゃんから聞いたよ。リュウ君が面白い事になってるっぽいので文化祭の時にそっちに帰ります。そしていっぱい愛でたいです。by可愛くなった我が子の母より。」
「え?お母さん来るの?良かったじゃない!」
「良くねえよ。普通の格好で会うのならまだしも何でメイド服状態で会わんといけないのだよ。はぁ、やる気が起きない。」
で、文化祭前日。
ルミ化するのは文化祭の二日前なのでその時最終チェックを終わらしている僕は暇なので校内を歩いていた。
で、食事係の方を見に行く事にした。
調理室の中を見ると他の学年の人たちも混じって自分達の料理を作っていた。
「おっ、リュウ。」
「よぉ、調子はどうだ?」
「まぁ見ての通りボロボロ。」
多分、喫茶用のサンドイッチなんだろうが切った時の力が強すぎて中から具材がはみ出していた。もう一つは…何だこれ?某突っ込みだけの影薄いメガネ君の姉の可愛そうな玉子焼き上の焦げた物がドンと置いてあった。
「アララ。」
「なぁ、コツとか教えてくれないか?」
「コツねぇ、とりあえずサンドイッチは力入れすぎないように切れば良いと思う。振り下ろす感じではなく後ろに引く感じで。」
「おぉ、成る程。」
「で、質問なんだが、この可愛そうな何かは何だ?」
「カステラ。」
「……え?今何て言った?」
「カステラって言った。」
「これが、カステラ?有り得ない。此処まで焦がす事は僕には出来んぞ。つうか、したら姉貴に叩き殺される。」
「なぁ、何がいけなかったんだ?」
「これは、僕がお手本見せたほうが早いと思うな。」
そう言い、手を洗い。エプロン着用し、作り始める。
一時間後。
「こんな感じだ。」
これを戻したらこんな感じになりました的な比較で隣においてみた。
『おー。』
「……お前ら、ちゃんと覚えたよな?」
『イエッサー!』
「んじゃあ、これ持っていくわ。耳の分欲しければ喰って良いぞ。僕は甘すぎて喰わないけど。」
それだけ言い、切り分けたカステラを大皿に置き教室に持っていった。
で教室の前に到着、一応ノックをし確認。
「おーい、入っても大丈夫か?」
「OKOK、誰も着替えてないよぉ。」
で、中に入ると教室の飾りつけも終わっており中にはいまだ練習中の接客の人たちがいた。
「あれ?それ如何したの?」
「差し入れみたいな物だ。食事係のほうが最悪だったので教えついでに作ったのを持ってきた。」
「へぇ、ていう事はこれリュウ君が作ったの?上手いね。」
「まあな、姉貴の注文に答えていったらレパートリーが増えた。」
等と話してる間にもカステラは一個また一個と女子のお腹の中へと消えていった。
「これ本当においしいね。」
「うん、確かに。」
等という賞賛の言葉に僕は一瞬口を緩ませた。
さて、早くも当日である。
ボクは着替えて教室に向かい開店する前に壁に頭をぶつけた。
精神ルミ化
「うぅ、痛い。」
リュウ君幾らなんでも痛すぎるよぉ。
「ルミちゃん、頑張ろうね?」
「はい。」
さて、開店と同時に行列が出来た。
数時間しても行列は途切れる事はなく、午前中だけで大黒字となってしまった。
…そんなに人気あるのかな?ワタシ。
その事に核心を付けられたのはワタシのシフトが終わるのと同時に長蛇の列が半分くらいになったのである。
…さてと、バッジの方もなくなっちゃったしそろそろ始めようか。
そう思い、物置部屋の鍵を開け、女子制服に着替え、壁に頭をぶつける。
精神流巳化
とりあえず物置部屋に設置した、ドクター作盗聴器型バッジの電波をキャッチする機械を作動させる。
「さてと、盗聴器の電波良好。えっと先ずはチャンネル1から調べてみるか。」
ポチッとボタンの1を押し、エンターキーを押す。
『ガガザザビーふむふむ、良し良しちゃんと撮れているな。…はい、バッチリです。それで報酬は?…報酬?ちゃんと撮れてないじゃない。これではメイドルミの写真集が完成しないじゃないか。』
…武井、五十万
で、次々と回していくと次から次へと武井のしもべ君たちが増えていった。
「えっと…千二百五十万。よし、徴収しに行こう。」
チャンネル1が話していた場所に急行する。
「よし、よし。これで大もうけできるぞぉ。」
「何で大儲け出来るんですか?」
「そりゃぁ、もちろん、ルミちゃんしゃし、ん、しゅう…」
「へぇ、どんなものですかボクにも見して下さい。」
「な…こ…か…だ?」
「ん~、何故此処が分ったんだ?って言ったんですか?ん~、言いましたよね?盗撮、ならびにそれを指示した奴のは罰金って。えっと、こっちで調べられた限りでは千二百五十万円になります。」
「……」
ガタガタと揺れ出す、武井の体から大量のSDカードが出てきた。
「没収、没収。これで罰金は五千に減らします。今日中に払ってください。」
「ちっ、何でバレたかなぁ?」
そう言い財布から樋口さんを一枚出した。
「こっちも仕事なのでな。」
そう言い、樋口さんをポケットの中に押し込んだ。
「では、またのお仕事お待ちします。」
軽く会釈をしその場を去った。
「さてと、盗聴器のシステムが壊れるまであと一分か。」
「へぇ、随分と可愛くなってるねぇ。ボス。」
男の声が先ほど通過した曲がり角より聞こえてきた。
「…山見か。」
「えぇ、そうですぜ。」
「何か用があるのか?」
「えぇ、団についての事です。」
「何か問題でも起きたのか?」
「まぁ、そんな所です。実は右の奴等が最近ちょっかいを出してきてるんです。」
「…あんまり良い話しではないな。だが、何で右の奴等なんだ?あいつら最弱じゃなかったっけか?」
「えぇ、でも噂によればでっかいパトロンがついたらしいんすよ。」
「パトロンね。まぁ、あまり苛めない程度で遊んでやりな。俺が許可する。」
「感謝しますぜ。新ボスの方は位の高さにへっぴり腰なんですよ。」
「だったら、お前がやれば良かったんじゃないか?」
「とんでもない。あっしにはボスの後を継ぐなんて事は到底出来ませんよ。」
「たく、そんな後ろ腰だから若いのにやられてしまうんだぞ。」
「ハハハ、違いありません。まぁ、楽しい高校生活を楽しんでくださいよ、ボス。」
「あぁ、お前もな。」
「あはは、あっしには無理ですよ。ボスみたいに器用な人間では無いっすからね。」
そう言い山見は去っていった。
「たく、変わらないな。」
「ホント、貴方は外見以外何も変わっておりませんね。」
「そうか?俺にしてみれば変わってるとは思うが。」
「いいえ、全然。僕からしてみれば少し落ち着きは増しましたが。それでも、自分の中の猛獣を時々放さないと理性が保っておけないようです。」
「お前こそ、前よりは毒舌が増えたんじゃないのか?有利。」
「ご冗談を。僕何時でも貴方の事を嫌っておりましたよ。僕より遅く入ったのに僕より早くボスの座に付き、突然僕の前から姿を消した。貴方はいつも僕のイラつく事しかしてこなかったからですよ。」
「それはすまなかったな。何なら今勝負するか?」
「遠慮しておきますよ。僕が勝負したいのは弱い貴方ではなく死神龍です。」
「あっそう。」
それだけ答え奴から遠ざかった。
さて、樋口さんをポケットに入れた僕は模擬店で使うわけでもなく近くのスーパーに行き材料を買っていった。
「まぁこんなもんだろ。」
さてと、で、調理室に到着するもはやくも閉会式中なので誰もいない。
「まぁ、その方がやりやすいしな。」
で、二時間後
「よし、出来た。甘さはどうかな?」
一つ食べる。ふむ、上出来上出来♪
ガラガラガラ
「あっ、やっと見つけたぁ。」
ミーシャの声が聞こえたので見ると、普礼、由美、芳賀、弥美それとミーシャがいた。
「よぉ、お前ら食べるか?」
そう言いクッキーを指す。
「そんな事より早く来なさいよ!」
そう言い弥美はボクの左手を掴み走り出した。
「フエ?」
引っ張られやってきたのは我が教室。
「ヤッホー。連れて来たよ!」
「…なっ?!」
今目の前にいるのは母さんと親父である。
「ヤッホ~♪リュウ君♪」
母さん、ノリが可笑しいよ。
「ふむぅ、研究のしがいがあるな。」
親父、人物の息子を実験体にしないで。
「それにしても可愛いぃ。ギュ~ってしたくなっちゃう。ギュ~って。」
母さんはそう言いながら前から抱きついてきた。
「あれ?ワタシと同じくらい?ワァ、凄い凄い♪成長したら大きくなるのかな?かな?」
しなくて良いです。肩が痛いので。
「あの、母さん、そろそろ離れてくれるかな?」
「え~?もうちょっとこうしてたいよぉ♪」
「身長差を考えて。息がしにくい。」
母さんの胸で。
「あっ、本当だぁ♪でも、もうちょっとこうしてるぅ。」
と言い母さんは抱きしめる力を少し上げた。
「母さん、終わったら迎えに来るから。」
「あ、はぁい♪」
「リュウ。」
「ん?」
「死ぬなよ。」
こんな事で死にたくはありませぇん。
小一時間後、母さんはやっとボクを解放してくれた後直ぐに「お正月また帰ってきちゃうよ!それまでじゃあねぇ♪」と言い去っていった。
「凄いお母さんだね。」
「あぁ、ちょっと相手を気絶させるくらいの抱き締め方するときもある。」
「じゃあ、今のは?」
「まだ良い方。」
その後、クッキーの事を思い出し調理室に戻り教室に持って帰り皆に振舞った。
「へぇ、武井の罰金クッキーなんだ。残りは?」
「とりあえず、収入の方にまわしておく。」
「それにしても美味しいね。ねぇ、昨日カステラと一緒にレシピ教えてよ。」
「良いよ。」
「え?じゃあ、あたしにも教えて。」
と言う声が女子生徒陣から次々と上がった。
仕方ないのでクッキーの材料とカステラの材料をもう一度買ってきて、調理室を使って教えてあげた。