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大学一年の課題で書いた短編  作者: 戌夜 凪


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3/4

「猫」 

お題は「交差点」の三人称小説課題。

神視点にするか主人公視点にするかは自由だったため、三人称主人公視点を選択。

初の三人称で訳が分からなくなって迷走した回。

 荒廃した世界に一つ灯る照明がある。元はゾンビをおびき寄せる罠として使われていたが、今ではその罠も機能しなくなり、夜になるとゾンビが集まるただの街灯になってしまった。光を見つけた生存者が「誰かがいるのかもしれない」と寄ってくることもあった。しかし最近では、そんな馬鹿もいなくなった。そのような判断力の欠如した人間は皆、死んでしまったのだろう。

 ゾンビが光に反応することを知っていて、日が暮れてから灯りを灯す生存者がいるわけがない。そんなことも分からずに、光につられて寄ってくる者など馬鹿以外の何物でもない。自分が原因でそれらの人間が死んだのではなく、それらの人間はその低能ゆえにむざむざとゾンビの餌食になったのだと、照明はそう憤慨していた。

 照明は孤立した存在になっていた。それでも、自分の存在によって余所にゾンビが行かないのであれば、人間を守るという使命を持って一生を孤独のまま終えてもいいと思っていた。その一生がいつ終わるのかはわからないが、自分は所詮道具なのだ。太陽光で充電され、夜になったら光る。忌み嫌われ、人間から危険区域として警戒されようと、別によかった。誰も来てほしくないとさえ思っていた。来て死なれてしまっては、自分の存在意義がいよいよなくなってしまう。

 それでも近寄ってくるものはいる。猫だ。罠という以上、ゾンビでは決して上ることのできない垂直に立った掴み所のない鉄パイプの上に照明が設置されている。登ることさえできたら、その上ほど安全な場所はないのだ。猫は昼夜問わず、腹が減っては食料を探しに出て、ゾンビに見つかっては走り逃げ、街灯の上に隠れた。ゾンビは馬鹿だが、あほではない。初めの頃こそ登ろうと必死に鉄パイプを揺らしていたが、最近では一切触れてこない。それどころか、見上げもしない。まるで、子どもが遊びで行う追いかけっこで安全地帯に入った途端に追いかけるのをやめる、ある種の紳士協定を守っているようにしか見えない。そんな猫が照明にとっては唯一の癒しであった。もしも手足があったなら、食料を取りに行って猫に与えてやりたいほどだった。

 ある日、人間の一団が照明の下にやってきた。ゾンビを殺しながら、徐々に近づいてくる。もう日が暮れる。早く去れと思いながらも早く来いとも思っていた。照明は常々自身の上で寝ている猫を連れて行って守ってくれる人間が現れないかと思っていた。

 話を聞くにどうやら、その一団は発電装置が欲しいらしい。電気の使い道は何も灯りだけでない。むしろ今まで誰もそれを目的にここに来た人間がいなかったことがおかしいくらいだ。

 うだうだと話し合っている人間を見て照明は憤っていた。もう日が暮れる。灯る光は彼の意志ではどうしようもないのだ。なんでもいいから早くしろと思っていた。二人の人間が照明に向かって登ってきた。他の人間は地上で発電機を取り外していた。タオルと靴を使って錆やわずかな凹凸を利用して器用に登ってきていた。これなら猫も連れて行ってくれるかもしれない。一匹寂しく夜を過ごすことも、一匹で食べ物を探す必要もなくなる。困ったらいつでもここに戻ってきたらいい。幸いあれらの人間は自衛が出来そうだ。今いる場所よりもずっと安全そうだ。照明は自身の唯一の心配事が解決されると喜んだ。

 人間が頂上付近まで登ってくると、猫は目を覚まして伸びをした。猫は下から登ってくる人間を不思議そうに眺めていた。登り切った人間の一人が猫を見て驚き焦り、転落していった。残ったもう一人も緊張した面持ちで、鉈を取り出して猫に向けた。猫は猫で、そんな様子の人間に威嚇をしていた。ゾンビ猫がいる‼ 誰か来てくれ‼ と叫びながら猫から目を離さない人間と、今にもとびかかりそうな猫。

 猫をペットとして飼っていたこともあるだろうに、何をそんなにも敵対視する必要があるのか、照明には人間の行動の一切が理解できなかった。人間も猫を食べようとするほどに落ちたか、と仕方がないと感じる反面、やるせなさも感じていた。

 出来ることなら猫を守るために、何かしてやりたいが、何もしてやれない。睨み合いは続き、もう照明がつく頃だ。下からは、叫びを聞いた人間が上がってきていた。追加の人間が登りきろうかという頃、猫がとびかかると、鉈を持った人間の首に噛みついて、人間ともども地上へと落ちて行った。照明が点いた。銃声が鳴り、周辺にいたゾンビはこちらに向かって走ってきた。人間の怒号に近い切羽詰まった声が響くが、照明はただひたすらに猫の無事を祈っていた。あたりが静まり返ってから数分後、ガリガリと金属をひっかく音がした。猫は無事に戻ってきた。

 口の周りの血を前足でくしくしと手入れしながら、満足そうに丸まった。いつもより元気そうだった。


交差点......交差点......と考えに考えた結果、交差点で動かないものと言えば街灯でしょう!ってなったんですよね。えぇ。合評にて「これって交差点でなくても成立する物語ですよね?」と言われた。全く以っておっしゃる通りで。ところでこれってヒューマンドラマの範疇なんですか?

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