表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神ゴォォォォォォォルド!!!!  作者: オルレアンの人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/7

6.本当の私


『な、なんと!!!ゲーム開始より初めての....挑戦者側からのフェイトジャック宣言だァァァァァァァ!!!!!』


 会場が揺れた。

 衝撃波のような歓声が一気に巻き上がる。


 (な.....フェイトジャック!?)


 予想だにしていなかった突然の宣言に、ゴールの思考が一瞬乱れる。


「お前....自分で何言ってるのかわかってんのか.....?」

「当たり前よ.....私の人生を賭けて、あなたをここで倒す.....!!」


 その眼に偽りはない。

 明らかに、敵を潰そうとするプロのギャンブラーの眼。


「理解できないな.....私の総資産はお前よりも遥かに上。自分自身をも勝手に賭けたところで圧倒的に差がある。それでも勝負するなど......狂ったか?」

「いいえ....あなたを倒せる金は今、用意する」

「用意だと?」


 (まさか隠し財産でも持ってたのか?いや、こんな貧乏臭いガキが俺を倒せる程の金、持ってるはずがない)


 ただの女の強がりなのか、ゴールはその言葉の意味を理解できずにいた。

 女はイスから立ち上がり、テーブル中央に左手をかざす。


「全員、私の左手に注目しててください!!今から....魔法を見せます!!」


 (魔法.....こいつ冒険者だったのか?まさか魔法を使ってテーブルを破壊....そのままゲームを無理やり終わらせようってか.....?馬鹿なのか?)


 女の言葉に、ゴールと挑戦者の女の子....そして店のスタッフに観客全員、女の左手に注目した。

 何をする気なのか誰もわからず観客はざわつき、スタッフは警戒する。


「いきます......」


 会場を静寂が包む。


「.....『食堂』!」


 女がそう唱えた次の瞬間、テーブルの上に何処からともなく皿が出現した。

 比喩ではなく、突然何もない空間からパッと現れたのだ。

 大小バラバラの皿が5枚。

 さらに箸、フォークやスプーンも共に現れる。


「「「ッ!!!!???」」」


 会場が一瞬で騒然とする。

 だがこれだけで終わらなかった。

 出現した皿の上に、次々と何かが盛られていく。

 

「.....食い物?」


 見たことのない料理。

 日の国の主食である白米が盛られ、上から人参やジャガイモ、何かの肉が入った茶色いドロっとした液体のかかる食べ物。

 丼に同じく白米、上には玉ねぎとおそらく牛肉、さらに謎の液体が少量白米に滲む食べ物。

 龍華帝国発祥の炒飯らしき食べ物。

 西の大陸でよく見られる円形のピザ。

 そして、チーズケーキ。


『な....何が起こったぁぁぁッ!!?一瞬でテーブルの上に様々な食べ物が現れたぞぉぉぉぉぉ!!!??』


 どれからも食欲を唆られる香ばしい匂いが湧き立つ。

 そして魔法とは明らかに違う未知の現象に、会場の視線は完全に食べ物に集中していた。

 

 (こんな魔法あるなんて聞いたことねぇ.......まさかこいつッ.....!!?)


 ゴールはようやく女の狙いに気付いた。


「これは....私が持つ、他の人にはない特別な力....これを使うデメリットは無く、ほぼ無限に私の知る食べ物、料理を出すことができます。先程言っていた私の価値6000万。これでさらに上がりますよね.....!?」

 

 (権能持ちだったのかこの女!!!自分の価値を上げやがったな......!!)


 世界には『権能』と呼ばれる、人並外れた修練の果てに得られる....スキルとも魔法とも違う特異な能力を持つ者達がいる。

 権能持ちの多くは1つの軍隊に匹敵する力を持ち、1人戦場に加わるだけで劣勢だった戦局を覆してしまうほど。


 そのため、超人のような力を持つ権能持ちが奴隷になる事は滅多にない。

 もし権能持ちが奴隷として売られれば、その価値はどんな奴隷よりも遥かに高額となる。


 (権能持ち....実際に見るのは初めてだが.......女の価値6000万.....普通あの年頃ならせいぜいいっても3000万が限度。だが恐らく、よくわからん高価な物を持っていたからその入手場所、情報が加味しての6000万。そこにさらに権能.....最低でも6億はいく....いや、あの能力の内容的にはさらに.....!!)


 女が明かした権能の内容。

 無限の食料を何のデメリットもなく生み出せる力。

 もしそれが本当であれば、未来永劫食料に困る事はない。

 しかも、知ればどんな料理でも出すことができる。

 いくらでも金稼ぎのアイデアが生み出せる、まさに“金の成る木”。


 その上、噂に聞く権能持ちの中では珍しい非戦闘特化の能力なため、反抗されるリスクが少ない。

 女の価値はもはや予測不可能。


『どうやら挑戦者の女は隠し持っていた権能を明かし、自身の総資産を上げる算段のようだ!!!では鑑定士方々、お願いします!!』


 3人の鑑定士達が再び会場に入ってくる。

 まず向かったのはテーブル、並べられた料理だ。

 

 1人は全ての料理を隅々まで見つめ、1人は料理と共に皿を触って確かめる。

 そしてもう1人は直接味見をする。

 

 恐る恐る....毒味のように匂いを嗅ぎ、パクッと一口。

 すると驚いたように目を見開いた。

 数秒指先すらピクリとも動かず停止した後、女の方へ振り向く。


「これを本当に無限に出せると?」

「はい。お望みならもっと出せますけど」

「では....」


 鑑定士は人差し指を立てる。


「あなたが最も美味しいと感じた料理を一つ、お出しできますか?」

「....わかりました」


 女は両手をテーブルに向ける。


「『食堂』」


 すると再び皿とスプーンが出現し、その上に料理が盛られた。


「.....これは」


 出てきたのはジャガイモに人参、薄い肉や玉ねぎが入った料理。

 ほのかの湯気が立っており、見ているだけでどこか心があったまるような感覚を感じる。


「私の誕生日に毎年母が作ってくれる、肉じゃがです」


 肉じゃが、聞き覚えのない言葉だ。


「なるほど...では....」


 鑑定士がそれを一口食す。

 静かに咀嚼し、持っていたスプーンをそっと置いた。


 その後、鑑定士たちが集まり話し合いが続く。

 そして入場してよりおよそ15分。

 

『お待たせ致しました....!!どうやら鑑定の結果が出たそうです!!!それでは発表致します!!!!結果は.....!!!!』


 アナウンスの声に会場の全ての人々が耳を傾ける。

 一切予想できないその価値の行方を知ろうと。

 そして出た結果は....。


『......きゅ.....9億キャメルだァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!』


 会場が再び揺れる。

 観客たちの熱気が、この驚愕の結果を盛り上げた。


『つまり、これで挑戦者の女の総資産は....現在のチップ数110枚の1億1000万キャメルを加算し、10億と1000万キャメルにまで上がったぞォォォォォォォォ!!!!!!』


「改めて宣言します」

 

 女は立ち上がり、ゴールを睨みつけながら見下ろす。


「私の総資産10億1000万を賭け.....貴方に『フェイトジャック』を申し込む....!!」

「てめぇっ......!!」


 予想以上の大金を賭ける大勝負となり、ゴールはこの試合で初めて焦りを覚える。

 例え負けてもゴールの総資産は15億、破滅する事はない。

 だが、こんな大勝負を突然打ってくる女に対し、疑心が生まれていた。

 

 イカサマをしているのではないか....と。


 (いやあり得ない.....あんな小心者の賭け事のド素人が、こんな土壇場でイカサマが出来るはずがない。必ずボロが出る....)


 では他に理由は。

 何の勝算も無く10億を賭けれる理由は。


 (....いや待て。まさか.....“勝算が無い”からか....!?)


 ゴールの脳裏に神の天啓のような解答が舞い降りる。

 

 (そうか....!!この女の狙いは....俺にサレンダーを選ばせること.....!!!)


 そして、答えを決定した。


 (そうすれば10億の半分、5億があいつの手に渡る.....!!事前に聞いていた奴の目標金額は2億.....余裕で釣りが出る.....!!なるほど....褒めてやる、ただのド素人じゃねぇ....一流のギャンブラーだ)


 この土壇場でその大見得、ハッタリをかました胆力。

 ゴールは女をただのド素人ではないと認めるが、ニヤリとほくそ笑む。

 

 (だが....額は違うが、追い詰められたプロのギャンブラー共がよくそのハッタリを俺にしてきた。つくづく運のないガキだ、俺が相手じゃなきゃ.....)


 ゴールは椅子に深く腰掛けたままゆっくりと女を見下ろし。


「ふっ.....面白い!!!受けてたとう、その人生を賭けた大ギャンブルッ!!!!!」


 (それは通っただろうなッ!!)


『我らがゴール様!!!!堂々と挑戦を受け入れたァァァァァァァァァ!!!!!』


 その宣言に、女の顔には確かに緊張が走った。

 

 (あの顔....やはりサレンダーが狙いだったか。勝負が始まってしまった....そう顔に書いてあるぞ)


 係の人間が素早く動きテーブル上の料理を片付け、戦いの準備は整う。

 

『では挑戦者の少女は、このターン勝負から降りていただきます』


 そう告げられると少女は小さく肩を落とし、ホっと息を吐いた。

 そして不安を隠しきれない瞳で女を見つめる。

 

『さぁ....それでは挑戦者の女、そしてゴール様....人生を賭けた大勝負、フェイトジャック開始ッ!!!!』


 本日三度目の『フェイトジャック』が、ついに始まった。


「いいね....この胸の高鳴り。これだからギャンブルはやめられない!」


 ゴールは笑みを浮かべながらそう女に言うが、当然嘘である。

 緊張など全くしていない。

 あるのは10億という予想外の大金。

 それを手に入れた喜び、女の哀れな大敗の愉悦だけだ。


 (この勝負を俺が引き受けた以上、完全にお前の勝ちは無くなった。お前の手札はエースと5、俺のブラックジャックの手札には絶対に勝てない)


 あらかじめ抜いた2枚のエースカード。

 残る2枚を互いが1枚ずつ持っているこの状況。

 だが、女の手札には確実に5のカードがあった。

 

 デッキのカードの並び順を正確に記憶しており、フォールスディールをする瞬間も抜かりなく、鏡のように薄っすらと光が反射する爪...いわゆる『シャイナー』を使い、チラッとカードの数字をゴールはしっかり見ていた。

 女の手元に配ったのは確実に、5のカードだった。

 

 (どんな天変地異が起きようとあいつの手札は変わらない....つまり勝ち確、10億の勝利....!!)


 ゴールは心中で笑い続けた。

 こんなにも完璧な試合、こんなにも容易く大金が転がり込んでくると。


 (これだからやめられない....ギャンブルは!!)


「で、どうする?手札は見えないがヒットするかい?それともスタンド?」


 (引いても引かなくても俺の勝ちは変わらないがな)


「スタンド。私はこの手札で勝負する....!!」


 女は一枚も追加せず、現在の手札で勝負することを宣言した。

 

 (最後の賭け...親の俺のバースト狙いで来たか....!)


 今までのフェイトジャックにおいて、子の選択のおよそ八割がスタンド。

 その理由は...子がフェイトジャックを宣言した場合、子は自身の手札を見れずあとどのくらいで自分がバーストするのかわからない点。

 そして、親が宣言した場合は手札こそ見えるが、先にバーストしようものなら敗北が決定するため。


 よほどの度胸、恐怖を感じない心、そして自身の運を絶対的と信じて疑わない者以外はヒットなど言えるはずがなかった。


 (だが当然....俺は....!)


『挑戦者の女はスタンドを選択ッ!!!さぁお次はゴール様ッ!!!!ヒット・オア・スタンドッ!!!??』


「スタンドだ!!!」


 ゴールは会場の隅々まで届くほどの声量で宣言する。

 客を沸かせ、勝負を盛り上げるための手法の一つだ。


 必然、会場は燃え上がる。

 あまりの興奮に倒れる者が出始めるほどに。


『ゴール様も同じくスタンドを選択したァァァァァ!!!!!ではまずはゴール様!!!カードをオープンしてくださいッッ!!!!!!』


 子がフェイトジャックを宣言した場合、場を盛り上げるためまず最初に親がカードをオープンすることとなっている。

 ゴールはゆっくりと腕を動かし、カードに触れる。


「いやはや....まさかここまでの大博打になるとは。せっかくだから名前を聞いておこうか?」


 ゴールの問いかけに、女はゆっくりと口を開いた。


金夏きんか.....最後に、私も一つ質問していいですか?」

「ん?なんだい?」

「貴方はどうしてそこまでお金を欲しがってるの?私なんて1ヶ月分の生活費を稼げればそれ以上は怖くていらない」


 お金を欲しがる理由。

 ゴールはその、人間であれば誰でも分かるような幼い質問に呆れ果てた。


「そりゃあ...人間は生きてく上で食糧や水が絶対必要だがありすぎると困る。だけど同じく、生きるために必要な金は....どれだけあろうと困ることがない。だからもっともっと欲しいんだよ!!あればあるだけ生き方も選べる!!尽きれば死に方すら選べない!!それが金だッ!!!」


 ゴールはこの試合、初めて本心を叫ぶ。

 

 かつてアメリア王国に入国してきた若きギャンブラー。

 自分の運、腕に底知れぬ自信を持っていた才能溢れたギャンブラーだったが入国して一夜、大敗を味わった。


 イカサマなど一切無い試合、相手はただただ“運が良かった”。

 それだけで、若いギャンブラーの未来は終わりを迎えた。


 この国では奴隷は大きく分けて2種類存在する。

 人間国家に労働力として売られる...多少の人権を持つ『上位奴隷』。

 亜人国家や裏社会に売られる...人権を失ったゴミ同然の存在『下位奴隷』。


 彼は下位奴隷として亜人国家に売られた。

 だがその後、命からがら脱走。

 おもちゃのように殺された自分と同じ奴隷の姿を見て、考えるより先に行動していた。

 

 それ以降、彼は真っ当なギャンブラーとしての道を自ら破壊し、世界一のサマ使いとしてこの国の総資産数トップの5人...通称『大富五優だいふごう』の地位を目指しギャンブルを始めた。


 この国ではイカサマが発覚すれば問答無用で下位奴隷として逮捕される。

 だが、それでも彼はイカサマを続けた。

 国に帰りやり直せる金を得て尚、彼は命懸けのイカサマを行い続ける。


 なぜなら彼の根はギャンブラー。

 どこまで行こうと、どこまで堕ちようとその本質は変わらない。

 

 金の悪魔に魅了された人間の1人なのだ。


「もっと言うなら...この国はギャンブルでなんでもできる、決めれる。国相手に勝てば王にだってなれる....!!」

「どんな事でも決めれる.....」


 女...金夏がボソッと呟く。


「まぁ....ここで破滅するお前には関係のない話だけどね。で...質問は終わりかい?じゃあ終わらせようか、金夏」


 ゴールはカードを持ち、それを勢いよく裏返す。


「っ....!!!」


 当然の内容、表に出た2枚のカードは。


『な....なんという豪運......!!!!??ゴール様!!なんとこの大勝負で....出したのは....!!!!ブラックジャックだァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!』


 心中で笑うゴール、驚きながらも必死に観客に伝えたアナウンス、そして沸き立つ観客。

 対してその結果に金夏は明らかな動揺をしていた。

 目は泳ぎ、息苦しそうに呼吸し、やがてテーブルに顔を伏せ下を見つめ始めた。


「我ながら何というか勝負強さか.....!すまないがこれで私の勝利は確定してしまったわけだ」


 ゴールは哀れみを含めた視線を金夏に向ける。


「はぁ.....はぁ.....」


 ブラックジャックという最強の手に、金夏は絶望し切っているのを隠せていない。


 ゴールの喉元まで笑いが込み上げる。

 だが堪える。

 品位を保ってこその勝者。

 ゴールは静かに、この上ない愉悦の時を味わった。


「さぁ....次は金夏、君の番だ」


 ゴールは余裕の笑みを浮かべながら金夏にカードを捲るよう促す。

 だが金夏は動こうとしない。

 顔を伏せたまま、自身の胸に手を当て動かない。


「往生際が悪いな。ま、気持ちはわかるよ。なんせ私の手はブラックジャック....君の敗北が確定してしまったようなもの。けど、もしかすれば君にもブラックジャックの手が揃っているかもしれない。さ、早く捲ってくれないか?」


 そんな可能性は1ミリもないがな....そう思いながらゴールは口にする。

 しかし、そう言われても金夏は動こうとしなかった。


『挑戦者の女、動かない!!!予想外の手に戦意喪失か!!!??』


 観客席から失笑が漏れる。

 みっともなく、机に伏したまま時間だけが過ぎていく。

 愉悦を味わっていたゴールだったが、段々とその往生際の悪さに面倒だと怒りを覚え始める。


「そんなに捲るのが怖いか?なら私が代わりに捲って上げよう....!」


 ゴールは席から立ち上がり、女のカードに手を伸ばす。

 

「.....私は」


 その瞬間、金夏が伏せたまま声を発し、ゴールは伸ばした手をぴたりと止めた。


「何?」


 苛立ち混じりに返すゴール。


「私は....ギャンブルが嫌い。私の家は貧乏だから......お金の大切さ、1円の重さを嫌というほど知ってる.......そんな大事なお金を.....大金を簡単に賭けて、相手が破滅する事を願う狂ったゲーム......」


 金夏は、声からして泣いていた。


「ゲームを楽しんでやってる貴方....人の事を虫のように観る観客......煽るアナウンス.....ずっと吐き気がするほど気持ち悪かった。こんなゲームの何が楽しいの?何が面白いの?なんで人の終わる瞬間を笑えるのって......」

「ご立派な事で、御託はいいからさっさと捲れ」


 負け犬の遠吠え。

 誰が聞いても金夏の発言はそうとしか聞こえなかった。

 

「でも.....今1番吐き気を感じてるのは.....私自身」

「あ?」


 金夏の顔がゆっくりと上がり始める。


「ギャンブルが嫌いなのに.....貴方たちの気持ちなんて理解したくもないのに........今...生まれて1番.....私は、体も脳も....気持ちいいと感じてる.....」


 見えたその顔は、泣いているが絶望の涙には見えない。

 嬉し涙、悔し涙の両方に見えた。

 女の今抱いている感情が見えない。


「気持ちいい?敗北がか?」


 (あまりの現実に、一周まわって頭が壊れたか?)


「いえ.....自分の少ない頭捻り出して.....親友から教わった事を全て引き出して.......最後に、運命が私を選んでくれたことに」

「.....は?」


 金夏が自身のカードに手を触れる。


「きっと私は....自分が否定してるだけで、ギャンブルを好きになれる本質を持ってる。けど、やっぱり私はこの吐き気を捨てない」

 

 まず一枚目...捲る。

 当然スペードのエース。


「最後に.....ゴールさん」


 金夏は真っ直ぐにゴールを見つめながら、二枚目のカードに触れ。


「本当の私に、気付かせてくれてありがとうございます。それと....私がこの世界で生きる目標を見つけさせてくれて.....ありがとう」


 捲る。

 カードは天を舞い、テーブルに叩きつけられる。

 2枚目のカード、その数字は......。


『がぁっ......!!!?』

「え........」

「「「っ........!!?」」」


 アナウンス、観客、少女...この場にいる全ての人々が声を失った。

 その表となったカードに、その揃えられた手札に。


「.......ありえない」

 

 ゴールの目が見開く。


『っ......!!!??はっ....!!なっ.....なんと言う事だァァァァァァァァァァァァ!!!!!!???ブラックジャックを出し、勝利確実と思われたゴール様!!!!!対して挑戦者の女が揃えたカードはッッッ!!!!!!』



 ハートのエース。



『ハートのエースとスペードのエースッッッッッ!!!!!!絶体絶命のこの状況で.....唯一ブラックジャックに勝てる役、『ダブルエース』を揃えやがったぞォォォォォォォォ!!!!!!!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ