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女神ゴォォォォォォォルド!!!!  作者: オルレアンの人


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4.ギャンブルの必勝法

「......」

「おいゼロ、面白いものが見れるって言ってたがこれのどこが面白いんだ?」 

 

 会場の中央、テーブルでカードをオープンする女が2人。

 その様子を座りながら、薄っすらと笑みを浮かべて眺める男がいた。

 その男...ゼロに対し、隣に立つ全身を黒いローブで隠し、白い無地の仮面を顔に付けている男はため息を吐く。


「いつも通り挑戦者の敗北ショーじゃねぇか。3週目の1戦目、そしてこの2戦目......ほら見ろまた負けた」


 女2人の手に対し親が開示したハンドは強く、2戦目も女2人の敗北が決まる。

 

「端から子が勝てるような親なんざ用意しねぇんだよ。もう行くぞ」

「.....まぁ待って」


 席から離れ会場から去ろうとする仮面の男をゼロは声で止める。

 ゼロは手元を見ずにトランプをリフルシャッフルし、1枚のカードを引いた。

 Jokerのカード。

 そのカードを仮面の男に見せる。


「......通りで見覚えある服だと思ったが、運がない転生者だな」


 仮面の男は再び隣の席に戻り、女学生へ視線を向ける。


「この国に転生してきた奴は大抵ああなる。ろくに状況もわからないままギャンブルに巻き込まれ破滅。この国の人間は他国の奴らと比べて異様に運が良いのが特徴的だ。遊びで勝たされる事はあるが、殆どの勝負で絶対に勝てない。ああやって負けて、下位奴隷となって亜人に売られ死ぬ。ここに転生してきたのが運の尽きだな」


 哀れみを滲ませた声で仮面の男は淡々と吐く。


 この国、『アメリア王国』が国の運営だろうとギャンブルで決める理由は、仮面の男が言った通り異常な運の良さゆえだ。

 どんなギャンブルでもそれが重要であればあるほど勝率が高い。

 たとえ負けたとしても、結果的にその方が良い方向へと繋がることが殆ど。


 ギャンブルで決めるデメリットが存在しないのだ。


「で、それがなんだ。もうじき死ぬ奴なんてどうでもいいだろ」

「どうだろう.....彼女、目は恐怖に染まってるけどまだ死んでないからなぁ.....それに『力』と『女神権能』がどんなものか確かめておきたいし」

「あいつも“覚醒者”なのか」

「さぁ....あの自称女神の転生基準がわからないし。けど、君や僕....それに今まで出会った転生者は殆どが“覚醒者”。可能性はあるよ」


 仮面の男が再度、女学生を強く見つめる。

 女は顔にはっきりと出ている焦りの色を隠そうともしない。

 賭け事をしたことがない普通の一般的な女学生、そうとしか見えなかった。

 

「....だが、今この状況で使おうとしないってことは、少なくとも冥友めいゆうの役に立つ『力』ではなさそうだな」

「そうだね。けど僕の勘が言ってるんだ、この勝負はここからが面白くなる.....って」

「......」


 仮面の男はしばし沈黙し、それからゆっくりと座り直す。

 始まる第3戦目。

 2人は転生者の女学生を見守った。



 3戦目、私の残りチップ数は140枚。

 

 (1000万の負け、目標の2億まで6000万.....このままじゃジリ貧....)


 カードが配られ、私はチップを10枚賭ける。

 このまま1枚1枚賭けたところで目標額に届かず時間が来て終わってしまう。


 (おおよそデッキが一周するまで4〜5戦.....いや、1人いなくなっちゃったからだいたい6〜7戦.....6000万を手に入れるには勝負に出るしかない....!!)


「ほ〜10枚とは、太っ腹だね」


 ゴールさんが薄く笑う。

 その間に女の子はチップ1枚を賭け、一斉にカードを開く。


 2と9の計11。

 女の子も2と9で計11。

 そして、ゴールさんの見せ札は6。


 (.....11、悪くない数字。もし絵札が来てくれれば21で勝てる。相手は6.........)


 脳裏に電流が走ったかのように、ある日の記憶が過ぎる。


 (あれ?これ....チャンスなんじゃ....)


 思い出すと悲しくなるからミユウとの思い出は記憶の奥底に閉じていた。

 けど、今この状況で頼れるのは誰よりもゲームが上手く強かったミユウだけ。


 私は記憶を捻り出し徐々に思い出してきた。

 ミユウが語った、トランプゲームにおける必勝法。

 そして勝負所を。


 (確かミユウは....親の見せ札が6の場合はチャンスだと言ってた。ブラックジャックにおいて親の伏せているカードは、最も数の多い絵札のカードとして考え行動するのが基本だとも)


 親は16で強制ヒット。

 今ゴールさんの手札が16と仮定した場合、ルール上必ず一度ヒットする必要がある。

 16でヒットの場合、6以上のカードも合わせればデッキの殆どが、出れば即バーストのカード。

 

 (対して私の11は、絵札のカードか10のカードが出れば計21。数が多い分、出る可能性は高いはずだ。なら、ここは賭けに出る...!!)


「さて、ヒットかスタンドか。どっちかな?」

「ダブルダウン....!!」


 空気が一瞬止まったような気がした。

 私の宣言にゴールさんは少しだけ眼を見開き驚いている。

 きっと予想外だったのだろう、明らかな初心者の私がヒットかスタンド以外の行動を取ることに。


「....えっと、ダブルダウン?本気かい?君の賭けチップは10枚。ダブルダウンはその倍...つまり20枚賭ける事になるが?」

「どうせこのままちびちび賭けたところで私の負け......だったら勝負に出るしかないでしょ....!」


 声が震える。

 けど視線は逸らさない。


 ゴールさんは少し間を空けると、手を叩き拍手をした。

 勇気を持って勝負に出た私を讃えるように。


「素晴らしい。君はかの勇者の如き勇敢な女だ!」


 私はチップをさらに10枚、前に出す。

 これでもう後戻りはできない。


「では.....1枚どうぞ」


 ゴールさんは1枚のカードを私に送る。

 ダブルダウンは1枚しか追加で得られない。

 渡されたこの1枚が10か絵札であることを祈り、私はゆっくりとカードを捲る。

 

 (ここで負けたら取り戻せない.....!お願いします....神様.....!!)



 3。



 見えたのは3。

 計14で強制スタンドだ。


「あらら、その勇敢な心に対して...君の運は応えなかったようだね」


 絶望という沼に片足を突っ込んでしまったかのような状況....感覚。

 けどまだ負けが確定したわけじゃない。

 親のバースト、それさえ起きてくれれば私は勝てる。


 そう自分を宥めるような言葉を心中で浮かべる中、女の子はヒットを一回し、7が出たため計18でスタンド。


 そしてゴールさん。

 まず伏せ札をオープンすると、ナイトのカード。

 予想通り絵札のカードで計16。


 まず第一関門は超えたと、心がガッツポーズをした。

 そして、ヒットで追加した1枚。

 あれが6以上であれば私の勝利だ。


 (出て......出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出て出てッッッッッ!!!!!)




 私は生まれて初めて、神の存在を疑った。


 出たのは5。

 計21でゴールさんの運の圧勝だ。


 視界が揺れ、呼吸が荒れ始める。

 イスから倒れてしまいそうになるほど、平衡感覚が狂い出す。


「じゃあ.....悪いけどこのチップは貰うね」


 そう言って私の20枚、2000万のチップがゴールさんに回収される。

 

 (これで3000万の負け........目標まで.....8000万......)



「ギャンブルの必勝法.....?」

「必勝法って言っても、絶対勝てるわけじゃないけどね。少なくとも勝てる確率を上げる方法よ」

 

 自室でトランプタワーを作るミユウは語る。


「ギャンブルにおいて必要なのは恐怖に打ち勝つ心、勇気。それと....やっちゃいけない事は何かわかる?」

「え.....イカサマ.....?」

「アハハハハ!確かに堂々とイカサマするのはダメね!けどイカサマだって立派な戦術だと私は思ってる。実際店側だってイカサマしてくる事あるんだから、こっちだって少しくらいしてもいいでしょ」

「というかミユウ....それお金賭けるギャンブルの話.....?もしかしてやった事あるの?」

「うん、世界大会でアメリカ行った時」


 ミユウはあらゆるジャンルのゲームで世界最強と言われるほどゲームが上手い。

 高校生でありながら既に64個もの国内・世界ゲーム大会の優勝トロフィーを持っている。

 初めてプレイするゲームだろうと、2日やればそのゲームのプロを完封するほどの腕になる。

 はっきり言ってゲームの神様みたいな存在だ。


「まぁ勿論未成年だから普通の賭博場じゃなくて、ちょっと危ない裏カジノみたいなところでだけどね。あ、仮面付けて素顔隠してたから身バレとかしてないよ〜」

「やっぱミユウは凄いね....色んな意味で」

「ふふん〜そうでしょ!」

 

 ミユウは褒めると、いつもあからさまに嬉しそうなドヤ顔を浮かべる。

 自分自身も褒められる....憧れられるのが当然だと思ってる、自信に満ち溢れた性格だからか。


「で、ギャンブルでやっちゃいけない事だけど.....それは、感情を取り乱すことよ」

「感情?」

「ギャンブルで負けた奴、勝ち続ける奴はよく感情が乱れて大抵破滅するの。負け分を取り返さなきゃ...っていう“焦り”。勝ってる故の驕り、ツキは自分に流れてるから大勝負してやる...っていう“慢心”。そうやって感情が乱れると本来しっかりと考えていれば勝てるはずの勝負で思考が乱れ、致命的な敗北を味わう。典型的なダメなギャンブラーね」


 (なんか難しいな....テストや宿題で制限時間が迫って焦って解くと答えを間違えたり、逆に余裕だと思って答えの再確認を怠って間違えるのと同じかな?)


「でもギャンブルって結局運頼りじゃないの?思考とか関係なく」

「お!じゃあちょっとトランプで勝負する?前に教えたポーカーで!」


 そう言うとミユウは完成間近だった2mちょいあるトランプタワーを笑顔で崩し、デッキに纏めた。

 さっきまで積み上げてきた努力を自ら一瞬で崩す行為に一切の躊躇を感じない。


 その後、20戦ほどポーカーで遊んだけど、私はミユウに一勝もできず全敗した。


「.....なんで勝てないの?」

「一つ一つ説明すると日が暮れちゃうから大事なとこだけ言うと....まず顔。強くない役の時、あからさまに顔に出てたよ」

「え、本当?」


 自分では特に意識してなかった。

 けど、言われて思い返してみれば確かに顔に出てたかもしれない。


「感情ぶれっぶれ!ギャンブルはいつだってポーカーフェイスよ!.....とは言ったけど、今回の場合別にそんなの気にしなくても手札丸わかりだったけどね」

「え?」

「後ろ見てごらん、小さい鏡あるでしょ」


 私が背後を見ると、小さな折りたたみ式の卓上鏡が床に置いてあった。


「....もしかして見えてた?」

「うん、丸見え」

「イカサマじゃん!」

「イカサマなんて気づかないほうが間抜けなのよ〜アホ〜!!」


 舌を出し、わざとらしく私を小馬鹿にするミユウ。

 

「ギャンブルで完全運頼りの奴なんて金を腐るほど持ってる奴かただのイカれ野郎、もしくは常識外の怪物だけよ。基本的に絶対勝ちたいならイカサマは必須。ということで金夏でもできるようなトランプの簡単なイカサマを教えてしんぜよう!」

「いや...私、ギャンブルとか一生やるつもりないから......」

「いいからいいから!まずはね......」



 なんで終わった後に思い出したんだろう。

 ミユウが言っていた、焦るのはダメだという事を。


 目標額に遠ざかり、残りの試合数も限られ.....今にして思えば私は焦っていた。

 心を後悔が埋め尽くす。

 けど、どれだけ過去の自分を恨もうとチップは返ってこない。


 (私が勝てる姿が思い浮かばない......助けて....ミユウ......)


 ポロポロと涙が垂れた。

 頬を伝いテーブルの縁に落ちる。

 もう....限界だった。


「運に見放され、精神も既に耐えきれていない.....うん、潰すなら今だね」


 ゴールさんの声が聞こえた。


「さぁ、カードを捲りな」


 前を見ると、いつの間にか配られていた2枚のカード。

 涙を拭きながら、震える手でそれを表にする。

 10と9、計19。


「これも勝負だ。せいぜいここへ来た自分を恨むんだな」


 ゴールさんが私を指差す。

 そして。


「『フェイトジャック』だ」


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