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見える僕と見えない君  作者: ちび太
第1章

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7/25

「守るということ」

読んでいただけると幸いです

――見えてしまった時点で、

あの子は、もう普通には戻れない。


ヒナトは、神社の拝殿の屋根に腰を下ろし、

夕暮れの境内を見下ろしていた。


風が吹く。

木々が揺れる。


異常は、まだ残っている。


「……間に合ってよかった」


今日、少し遅れていたら。

あの声に、もう一歩でも近づいていたら。


恒一は、

“連れていかれていた”。


(……面倒なことになった)


そう思いながらも、

胸の奥が妙にざわつく。


――まただ。


同じだ。

昔と、同じ。


ヒナトの視線の先には、

誰もいない境内。


だが、

見えない“境界”が、確かにそこにある。


人は気づかない。

妖怪は、知っている。


「……見える人間なんて」


そう呟いて、

ヒナトは目を閉じた。


***


昔から、

ここには時々“見える人間”が来た。


子ども。

迷い込んだ大人。

心に穴の空いた者。


ほとんどは、

すぐに来なくなる。


怖がるか、

忘れるか。


でも――


恒一は違った。


怖がらなかった。

逃げなかった。


それが、

一番厄介だった。


***


境内の端、

古い家のほうから気配がする。


ヒナトは、音もなく降りた。


「……イエモリ」


障子の向こうで、

何かが、きしりと動く。


「今日は、あの子は来ない」


そう告げると、

箒が、そっと立てかけられた。


――分かっている、という合図。


「……すまないな」


ヒナトは、

誰にともなく言った。


守るだけの存在は、

変化を嫌う。


それでも、

恒一は“変化そのもの”だった。


***


川辺に立つ。


水面は、静かだ。


だが、

その下には、別の流れがある。


「……近すぎる」


悪い妖怪は、

完全には消えていない。


声を失っただけだ。


(次は、

もっと巧くやる)


ヒナトは、

そう確信していた。


「……」


拳を、

ぎゅっと握る。


守るには、

距離が必要だ。


近すぎても、

遠すぎても、だめだ。


でも――


(あの子は、

 近づいてくる)


息ができるから。

落ち着くから。


そんな理由で。


「……来るな、って言っただろ」


誰もいない空間に、

そう呟く。


けれど、

本心は違う。


(……来なくなるな)


その矛盾が、

胸を締めつける。


***


夕暮れの終わり。


ヒナトは、

境内の中央に立った。


もし次に、

悪い妖怪が現れるなら。


恒一が、

それに気づいてしまったなら。


(……選ばせるしかない)


守られる側でいるか。

それとも――

自分の足で立つか。


「……」


ヒナトは、

静かに空を見上げる。


見えない世界と、

見える世界の狭間で。


また一人、

守るべき存在が増えてしまった。


それが、

怖くて。


少しだけ――

嬉しかった。


次回

恒一のちょっとした成長が

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