表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見える僕と見えない君  作者: ちび太
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/25

「夕飯の支度」

読んでいただけると幸いです

夕方の台所には、

味噌の匂いが広がっていた。


鍋の中身を確かめながら、

真壁 澄は、

何度目かの視線を窓の外に送る。


神社の方角。


今日は、

帰りが遅い。


「……」


澄は、

ため息の代わりに火を弱めた。


慌てる必要はない。


そういう日だと、

分かっている。


***


戸が開く音。


「ただいま」


少し、

声がかすれている。


「おかえり」


澄は、

やはり振り返らない。


包丁を置き、

鍋に蓋をする。


「靴、ちゃんと揃えてるね」


恒一の動きが、

一瞬止まる。


「……うん」


「転ばなかった?」


何気ない問い。


でも、

澄の目は、

彼の袖口に向いていた。


引っかき傷はない。


土の汚れもない。


「大丈夫」


「そう」


それで話は終わる。


***


食卓。


澄は、

恒一の箸の進みを見ている。


早くも遅くもない。


でも、

少しだけ、

迷う間がある。


「……疲れた?」


「ちょっとだけ」


「そういう顔だね」


否定も、

深掘りもしない。


澄は、

味噌汁をひと口すすり、

ぽつりと続ける。


「今日は、

 帰り道が長かったでしょう」


恒一は、

顔を上げる。


「……なんで分かるの?」


「分かるよ」


理由は言わない。


澄は、

魚の骨を外しながら、

静かに言う。


「寄り道した日は、

 足音が違う」


恒一は、

何も言えなくなる。


***


食後。


湯呑みを片付けながら、

澄は背を向けたまま言う。


「……あの場所は、

 無理をすると疲れる」


恒一の手が、

止まる。


「……知ってるの?」


「知ってる、じゃない」


澄は、

少しだけ言葉を選ぶ。


「昔から、

 そういう場所だよ」


それ以上は、

続かない。


***


夜。


恒一が部屋に戻ったあと、

澄は縁側に出た。


月は、

雲に半分隠れている。


澄は、

小さく息を吐く。


「……見えちゃう子は、

 大変だ」


独り言。


誰にも、

聞かれない声。


神社の方を見る。


「でも、

 あの子は優しいからね」


それが、

祈りの代わりだった。


***


障子を閉める前、

澄はもう一度だけ振り返る。


「……ちゃんと、

 守ってあげておくれ」


宛先は、

言わない。


夜は、

何も答えない。


それで、

いい。


お婆ちゃん登場です

(すみ)さんです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ