0話 プロローグ
この世の中は苦しみにあふれていて、理不尽だった。僕は抗うことができなかった。
何もできなかった。もう何も考えずに生きていたい。
格好悪いこと言っているけど、怠けて生きてきたわけではない。最初は夢があった。
僕は格好よくなりたかった。漠然だけど、本やゲームの勇者のように、日曜日の朝のヒーローたちのようになりたかった。彼らは特別でいつも輝いていた。どんな形であれ、自分の生き方を貫き通していたからだ。だから、自分も将来は誰かの力になれることや仕事をやりたいと思って勉強した。
好きなことも趣味もあった。自分のやりたいことに挑戦だってしてきた。できるように頑張ったし、目標や理想の自分に向けて試行錯誤を続けてきた。
でも、自分の力ではできないことが沢山あった。越えられない壁にぶち当たった。できないと他者から失望と嘲笑が飛んできた。良かれと思ってしたことが裏目に出たこともある。
一番辛かったのは、僕よりできるやつがいて、比べられたことだった。自分の上位互換が存在することを認識するのは、とても辛いことだった。僕は掃いて捨ててもいい奴だと、そいつがいれば僕はいらないじゃないかと思い知らされた。
至らない自分と心に感じる無力感。嫌な感覚だった。なにかに挑戦したいという気持ちは消えていく。
失敗してしまうかも。格好悪くなりたくない。そう思うとどうしようもなくなる。
やがて、僕は自分から行動して何かをやりたいと思うことがなくなった。夢も、好きなことも、諦めてしまうと肩の荷が降りて清々しく感じた。共に、積み重ねたものを放り投げたことで、自分の中身が空っぽになって虚無も感じた。
そして、何も考えず流されるように生きていくようになった。仕事も何もかも指示されたことやっていればよかったし、楽だった。
もう何もしたくなかった。何も考えず、何もつくりだせないのなら、生きている意味なんてなかった。死ぬなら、他の人に迷惑をかけずに死ぬべきだ。でも、迷惑をかけない死に方なんてわからない。
もし、今の自分を捨てて、無になってしまえれば。そう思って生き続けていた。
でも、こんな僕でも、一歩を踏み出すことができた。
いろんな人との出会いの中で、自分と他者を比べても意味はなく、自分の道を見つけることが大切なことであると知った。自分と他者は異なる。できることも役割も違うと気づいた。だから、人は助け合える。一人ではと気づくことができなかった
だろう。
世界を変えたいと願う少女と出会った。恐れていても不安であっても、たった一人で過酷な環境に抗い続けていた。他者からの言葉に靡かず、自分を貫こうと努力する姿は、僕には全く無いものであった。その姿に惹かれ、初めて自分の意思で応援したいと思える人ができた。
不安や今日から逃げて、今まで殻に籠もって狭い世界で生きてきた。でも、目を開けば、理不尽と戦い続ける人たちがいた。誰だって不安を抱えていても前を向こうとしていた。
僕はひとりじゃなかった。だから、僕だって変われるはず。
これは、僕が夢を応援する物語。そして、僕が夢を取り戻す物語。