9-2「見せてあげるわよ! その野良アプリが、サーバーごと乗っ取るところをね!」
それは、あまりにも理不尽で、あまりにも事務的な、死刑宣告だった。
惑星の初期化。私という「ウィルス」を駆除するために、この星の全ての生命を道連れにする。彼らにとって、私たちはただのデータ。エルフも、ドワーフも、セレスティアも、私が昨日食べたパフェの味も、全てが「消去」ボタン一つで消える、取るに足らない情報なのだ。
司令部が「そんな!」「ひどい!」の大合唱に包まれる中、私の頭は別のことで沸騰していた。
(まただ…! またこのパターンだ! 前の世界でも、あのクソ上司どもは『よく分からんから』って理由でプロジェクトごと私を切り捨てた! システムの都合で、天才がバグ扱いされるなんて、もうウンザリなのよ!)
《晶》
冷静なウルちゃんの声が、怒りでオーバーヒートしかけた私の脳を冷却する。
《彼らの論理構造、解析完了。駆除理由は、西暦2055年に人類政府が下した『リアクターFUKUOKAの放棄』とほぼ同一。『なんかよく分かんないけどヤバそうだから、今のうちに消しとこ』という思考です》
「…そう。そういうことね、ウルちゃん」
私は顔を上げた。瞳には怒りを通り越した、不敵な光が宿る。
「分かったわよ、大家さん。私たちが違法建築の『野良アプリ』だって言うなら…」
私はコンソールを強く叩き、ニヤリと笑った。
「見せてあげるわよ! その野良アプリが、サーバーごと乗っ取るところをね!」
***
私の宣戦布告から3日後。研究室は惑星防衛作戦司令室と化し、大陸のトップリーダーたちと連日不眠不休の議論を続けていたが、状況は絶望的だった。
「『惑星資源の定期監査』ですって!? そんなの、ただの略奪じゃないの!」
セレスティアが青い顔で叫ぶ。ホログラムには、264時間後という無慈悲なカウントダウンタイマーが刻まれていた。
『うむ…』ドワーフのボルガノンが唸る。
『ワシらの古代伝承にもある。「天より来たりし神々は、良き実りし畑は残し、雑草茂る畑は焼き払う」と。ワシらは今、その収穫期を待つ作物というわけだ』
『森の言い伝えでは、彼らは「星の剪定者」。伸びすぎた枝を刈り、歪んだ幹を切り倒す、無慈悲な庭師…』 エルフの長老ラエヴァノールの言葉が、室内の絶望をさらに深める。
「だからハーヴェスト・オリジンなのね」
《マスター、惑星内部から正体不明の自己増殖型データを検出。監査船団とは別口です》
「はぁ!? こんな時に内側から!?」




