9-1『これより、惑星保全プロトコルに基づき、汚染源の駆除シークエンスに移行します。なお、このプロセスは、不可逆です』
惑星監査官『ハーヴェスター・オリジン』の艦隊が、静かに太陽系へと姿を現した。
それは、我々が想像するような軍艦ではなかった。表面に一切の凹凸がない、完全な鏡面の幾何学図形。巨大な十二面体、球体、そして三角錐。まるで宇宙空間に浮かぶ、巨大なサーバーラック群だった。彼らは、何の攻撃もしてこない。ただ、冷たく、無機質に、この星を「スキャン」しているようだった。
私の研究室に設置された惑星防衛総司令部は、息を呑むような沈黙に支配されていた。
「…攻撃の意図は、ないのでしょうか?」
セレスティアの震える声が、室内に響く。だが、その問いに答えられる者は誰もいなかった。
数時間後、彼らはようやく口を開いた。世界中の脳内に、カスタマーサポートセンターからのお知らせみたいな完璧な翻訳で。
『――お客様各位。惑星『ガイア-07』の定期システム監査を開始しました。サーバーログを拝見したところ、直近の文明レベルの異常な高騰、及び魔素リソースの規約違反レベルでの不正利用を確認。原因を特定いたしました』
ゴクリ、と誰かが息を呑む。
『原因:外部ネットワークより侵入した、未認可のアプリケーション。コードネーム『ULTRA Gemini SSS』。及び、それに付随する非公式生体インターフェース『桜 晶』。…結論として、ヤバい野良アプリのインストールを確認しました』
「野良アプリ!?」
思わず叫んだ私に、セレスティア、ラエヴァノール、ボルガノン…その場にいた全員の視線が突き刺さる。
待って、今一番ショック受けてるの私だから!
『これより、惑星保全プロトコルに基づき、汚染源の駆除シークエンスに移行します。惑星表層の全情報を一度初期化し、システムをクリーンな状態に復元します。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。なお、このプロセスは、不可逆です』




