8-5「世界樹が…神話の時代に一度だけ鳴ったという『目覚めの詩』を歌っておる!」 ☆
その夜は、エルフとドワーフが数千年ぶりに杯を交わす大宴会。
「世界樹をありがとう」
「完敗だ、嬢ちゃん! だが覚えとけ! いつかお前を超える逸品を打ち上げてみせる!」
頑固オヤジ二人が少年のような笑顔で感謝とライバル宣言してきた。悪くない。
「素晴らしいわ、アキ! 森を救い、二種族を和解させ…これ以上ない完璧な結末ね!」
「でしょ? 私にかかればこんなもんよ!」
私がドヤ顔で勝利の美酒を飲み干そうと特製チタングラスに口付けしようとした、まさにその時。
ゴオオオオオォォォン…!
地下都市の天井を突き抜け、荘厳で、無機質な鐘の音が響き渡った。
「な、なんだぁ!?」
「世界樹が…神話の時代に一度だけ鳴ったという『目覚めの詩』を歌っておる!」
ラエヴァノールが顔面蒼白で叫ぶ。
「アキ~やっぱりやらかしたわね・・・『災いは放たれた』、繰り返す『災いは放たれた』」
オーブ通信機を用いたセレスティアの動きが激しくなる。
慌てて地上に戻ると、世界樹が天に向かって極めて秩序だった光の信号を発信していた。
「ウルちゃん、何これ!?」
《ご説明します、晶。あなたの完璧すぎる修理により、世界樹のシステムエラーが完全にゼロになりました》
「いいことじゃない!」
《その結果、本来の機能が再起動しました。この世界樹の正体は、惑星全体の状況をオーナーに報告するための超巨大な『惑星ステータス報告ビーコン』です》
「……は?」
《つまり晶。あなたは故障していたサーバーを完璧に修理し、再起動させたのです。そして世界樹は、この惑星の『大家さん』にこう報告しました》
ウルちゃんがARモニターに翻訳結果を映す。
『――システム正常化。いつでも定期メンテナンスとリソース監査、お待ちしてます!』
『アキ様! あ、あなた一体、どこへ、だ・・誰んちに連絡しちゃったんですか!?』
オーブ通信機から動揺しまくりのシルヴァンの悲鳴が響く。
その答えのように、天から返信が来た。それは文字となり、大陸中の全生命体の脳内に直接響き渡った。
『――信号受信。惑星管理システム『ガイア-07』の正常稼働を確認しました。メンテナンス担当による自己修復を賞賛。これより、規定プロトコルに基づき、管理人による惑星資源の定期監査を実施します。監査船団『ハーヴェスター・オリジン』が、ただいま太陽系外縁部ワープゲートを通過しました。当惑星への到着予定時刻は、標準時で約336時間後となります。なお、今回の監査では、直近の文明レベルの急激な上昇に伴う、知的生命体のサンプル採取も予定されております。皆様のご協力を、よろしくお願いいたします』
「…………」
「…………」
「…………」
私の完璧な仕事は、この星の文明そのものを査定しに来る、宇宙の大家さん(しかもちょっとヤバそう)を呼び寄せてしまったのだ。
《ご参考までに、マスター。文脈の流れを読み取ると『サンプル採取』は、一般的に『誘拐』を意味する言葉です》
「こんな時だけマスター言うなっ!! 冷静な解説もやめろぉ!」




