1-2 ゲームの序盤としてはハードモード過ぎない?
「確かに足が細く、手肌も抜けるように白いけど・・美少女ってどうやって確認するのよっっ」
《ステータスと唱えてください。》
「ステータス!!」
刹那、晶の眼前に視野角の広い鮮明なディスプレイが左右上下から現れ、様々な情報がいくつもの階層毎に提示され、自分の顔を見てみたいと意識すると中央に晶の顔が特出しして映された。
そこにいたのは銀髪碧眼の見知らぬ美少女。髪は月光を溶かし込んだような白銀、瞳は深く澄んだサファイア、人ならざる美しさを宿した、幻想的な容姿は神秘性も兼ね備えていた。体を動かすとディスプレイの画像も動いたがどこにカメラがあるのかは全くわからない。年齢は15、6歳くらいだろうか。
「……嘘でしょ。え、誰この子。めっちゃ可愛い。ていうか私!やったー!でもこのディスプレイ解像度めっちゃいいわね。《リアルな映像体験を提供するためにハイOLEDディスプレイクラスで1000Hzの高リフレッシュレートに対応しています》でも服は血まみれで噛まれて引き裂かれたようなボロ切れ!どうしてドラゴンに呑み込まれたのかしら。貴女のこの魅惑のボディと素敵なフェイス使わせてもらう!ごめん!」手を合わせる晶。
《魅惑のボディの持ち主ですが、生贄の贄となった可能性85.7%です》
「ゲームの序盤としてはハードモード過ぎない?」
《ハードモードなのは…、あなたの脳内に、極めて特異な生体量子パターンが形成されています》
「え?何それ、病気!?私、頭がポンコツになったの!?」
《若干ポンコツなのは元々ですが、逆です。あなたの脳内に、極めて特異な生体量子パターンが形成され、魔素を直接観測し、思考だけで論理回路…すなわち『魔法陣』を構築・保存可能な状態にあります。おめでとうございます。あなたは、歩く超高性能魔法演算装置(魔法スパコンAI)です》
「さらっとポンコツ言うな!…へっ、じゃあ、私、魔法やAI知識が使えるってこと!?」
《そういう理解で正しいと考えられます。まずは、この巨大な魔石をどうにかしない限り、我々はここから一歩も動けません。空間を歪曲させ、任意の位置にオブジェクトを格納する『空間魔法』の構築を推奨します》
「いきなり応用魔法っぽくない!?でも、やるしかないわね!」 私は巨大なドラゴンの魔石に手を置いた。
《ポジティブな精神状態は、生存確率を7.3%向上させます。良い判断です。それでは、『魔法リアクター』を発動します。私が設計した科学的魔法陣をあなたの脳内に投影するのでイメージしてください。電子やクォークといった素粒子を「超ミクロなひも」と定義付け、空間を定義する11次元の座標軸を…》
「待って待って!いきなり宇宙物理学の超ひも理論!?それって数学的な一貫性を保つために、私たちの住む4次元(3次元空間+1次元時間)に加えて、もっと高次元の「余剰次元」が存在することを要求するんじゃなかったっけ、そんな大仰なヤツでなくて、違うのもっとこう、アイテムボックスや四次元ポケット的な感じでお願い!」
《……ポンコツでも理解可能なインターフェースに最適化します。思考してください。『賢者のストレージ』と(ホントは「多次元並列ストレージ領域」なんですよ晶。)》
かくして、AIと若干ポンコツ天才?魔法少女の、奇妙で過酷な異世界サバイバルの幕が開けた。
「さらっとポンコツ言うなぁ」という叫び声を残して。




