8-1《了解。我々は今から3分間、エルフにとって『なんかいい匂いがする風』になります》
大陸最高峰の山脈を鼻歌交じりで飛び越え、高高度ステルス輸送機はエルフの森を目指していた。
「あ、アキ! 本当にあんな結界だらけの森に入れるのかしら!? 古来より『入った者は二度と出られない死の森』って吟遊詩人が歌ってたわよ!」
「大丈夫だって。要は超高性能なGPS妨害と光学迷彩でしょ? こっちも同じことすれば、ただの森よ、ただの森」
《前方、認識阻害結界。通称『迷い人の森』です。晶の発言通り、ただのハイテク防犯システムですね》
「でしょ? ウルちゃん、周波数合わせて『無害なそよ風』モードで侵入。3分で解析よろしく」
《了解。我々は今から3分間、エルフにとって『なんかいい匂いがする風』になります》
風のように降り立ち、灰色に枯れた森の病巣を解析すること5分。認識阻害を解いた瞬間、私たちは弓を構えたエルフ数十人に包囲されていた。早すぎない?
「何者だ! 警告もなしに聖域を侵すとは!」
長老らしきエルフが前に出る。
「貴様が、我が森を腐らせたという賢者アキか!」
「いかにも。そしてあなたが、証拠もなく私を犯人扱いしてるエルフの代表ね」
「森がそう告げている! 森の苦しみが何よりの証拠だ!」
「それ、あなたの感想ですよね? なんかデータとか無いの、データとか」
「で、データだとぉ!?」
一触即発の空気の中、ウルちゃんが冷静に分析結果を叩きつける。
《マスター、汚染源を特定。世界樹の地下、惑星管理システム『ガイア』のファイアウォールです。数千年単位のメンテ放棄により、蓄積したエラーデータがバグ化。現在、汚染情報がダダ洩れ中です》




