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6-1《はいはい。どうせまた、後世の歴史家たちがのたうち回るような「奇跡《やらかし》」が起きるのですね。》☆


私が創り出した数々の奇跡やらかしは、アルカディア王国を豊かにし、人々を平和にした。

しかし、その急激すぎる発展と、私という規格外の存在は、隣国『アークトゥルス神聖帝国』を著しく刺激した。


帝国は、古き神々への信仰と、伝統的な魔法騎士団による軍事力を国の礎とする、大陸の覇者。

彼らにとって、科学と見紛う魔法を操り、民衆から「女神」と崇められる私の存在は、自らの権威を根底から覆しかねない、許しがたい「異端」であり「偽りの神」だった。


「聞け、惑わされしアルカディアの民よ!偽りの女神アキが与える機械仕掛けの奇跡は神への冒涜であり、世界の理を歪める大罪である!神の秩序に仇なすその存在、もはや見過ごすことは叶わぬ!清廉なる我が神聖帝国は、神の沈黙に代わり、汝に断罪を告げる。これこそが神託である!神意に基づき、かの地を聖絶する!」


神聖帝国の皇帝テオドシウス I世(テオドシウス・サンクトゥス・ピウス)が発した宣戦布告の演説が、「オーブ・ネットワーク」を通じてリアルタイムでアルカディア王宮に響き渡る。セレスティアや大臣たちは青ざめ、国中に緊張が走った。


「戦争…ですか。面倒くさいことこの上ないわね」

私はといえば、新作のパフェをスプーンでつつきながら、ホログラムスクリーンに映る皇帝の顔を眺めていた。


「アキ!笑いごとではないわ!帝国の軍事力は我が国の数倍…!国境にはすでに数十万の大軍が集結しているのよ!」

セレスティアが悲痛な声を上げる。


《報告。アークトゥルス神聖帝国、総兵力30万。対する我が国の動員可能兵力は5万。戦力比は6対1。通常戦闘に突入した場合、我が国の敗北確率は99.7%です》

「ほら見なさい!」


ウルちゃんの冷静な分析に、セレスティアは絶望的な表情を浮かべた。

しかし、私はパフェの最後のイチゴを口に運び、悠然と立ち上がった。


「大丈夫よ、セレスティア。そもそも、兵隊さん同士がマジメに戦うなんて、もう石器時代だわ」

「え…?」

「人が死ぬのは後味が悪いし、血で汚れた地面の掃除も大変じゃない。もっとスマートに、誰も傷つけずに、終わらせましょ」


私の言葉に、王宮の誰もが意味を理解できずに首を傾げた。私はホログラムスクリーンに映る、勝ち誇った顔の皇帝に向かって、そっと微笑みかける。


「――皇帝陛下。あなたの神託は『かの地を聖絶する』、ですって? 面白いわ。ならば、私は私の神託(アリア)を教えてあげましょう。」


《はいはい。どうせまた、後世の歴史家たちが、「また」のたうち回るような「奇跡という名の《やらかし》」が起きるのですね。承知している過去の「やらかし」データベースとの照合を開始。類似ケースに基づき、次の行動を予測しましたが、・・また碌でもない蓋然性が極めて高いです。》


私はくるりと振り返り、オペレーターであるウルちゃんに告げた。

その声は、まるで壮大なオペラの開演を告げるように、静かに、しかし絶対的な自信を持って玉座の間に響き渡った。


「ウルちゃん。プラン 『誰も食べてはならぬ』 を開始するわっっ」


《・・そうきましたか。》


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