5-2 天使(殺戮兵器)の伝説と丸裸の王国☆
「まずは敵の位置を正確に把握しないとね!」
私は王城の地下に新設した巨大なオペレーションルームで、オーブ・ソナーのメインスイッチに手をかけた。このシステムは、王都の地下深くに設置した巨大な魔力水晶を使い、国中に微弱な探知パルスを放って、その反響から魔力の位置を特定する、いわば魔力版のレーダーだ。
「探知範囲は…とりあえず王国全土で!えいっ!」
私がスイッチを入れた瞬間、部屋の中央に浮かぶ巨大なホログラムスクリーンに、無数の光点が現れた。それは、王国に存在するありとあらゆる生命体の魔力反応だった。
「おお、すごい!魔物の群れの位置、丸わかりじゃない!」
私が感動していると、隣で見ていたセレスティアや大臣たちが、次第に顔面蒼白になっていく。
「へ、陛下…あれはまさか、陛下の寝室…?「なんの羞恥プレイじゃ?!」」
「ま、待て、私の隠し財産の金庫の位置まで光っておらんか!?」
「陛下お声が裏返っておりますぞ。」
「きゃあ!私がお風呂がまるわかり?!」
「あぁ宰相が昼間から酒を嗜んでいらっしゃる。」
「兵士どもめ緩みきっておるではないか。」
そう、オーブ・ソナーはあまりにも高性能すぎた。魔物だけでなく、人間、動物、さらには虫一匹に至るまで、全ての生命活動をリアルタイムでマッピングしてしまったのだ。王侯貴族のプライベートは完全に丸裸。王国中の秘密が、この一室で駄々洩れだった。
《プライバシーの概念が欠如した、素晴らしい監視システムですね。現在、この部屋にいる全員の瞳孔が開き、心拍数と血圧が危険域に達し、またひきつけや過呼吸を起こす可能性があります。》
「うわっ、ごめん!すぐ生体識別フィルターかけるから!」
私が慌てて設定を調整し、魔物だけの反応を抽出する。スクリーンには、東方街道に集まるおびただしい数の赤い光点が表示された。
「よし、じゃあ次はお掃除の時間ね!いっけー!私の可愛い妖精たち!」
私の号令と共に、王城の尖塔から、手のひらサイズの妖精の形をしたドローンが数千機、一斉に発進した。キラキラと光る翅を持つ、おとぎ話に出てくるような愛らしい姿。それが、私の最新作『ピクシー・ドローン』だ。
東方街道でキャラバンを襲っていたオークたちは、突如空に現れた美しい光の群れに動きを止めた。村人たちも、恐怖の中でその幻想的な光景を見上げる。
「な、なんだ…?天使様…?」
次の瞬間、天使たちの指先から、極細の光線が無数に放たれた。音はない。爆発もない。ただ、光線に触れたオークたちが、分子レベルで崩壊し、光の粒子となって消滅していくだけ。えげつない威力の荷電粒子砲である。
虐殺は、わずか数分で終わった。後には、呆然とする村人たちと、何事もなかったかのように静かな街道が残されただけ。
ピクシー・ドローンたちは、舞い踊るように空を旋回すると、再び王都の方角へと帰っていった。
この日以降、アルカディア王国では「危機が迫る時、女神アキ様が遣わした天使の軍勢が、穢れを浄化してくださる」という新たな伝説が、爆発的に広まった。
《報告。魔物の群れの完全消滅を確認。副次効果として、あなたの神格化がさらに進行。また、オーブ・ソナーは鉱脈探査に応用可能であり、王国の鉱物資源量を1200%向上させる潜在性があります》
「まあ、結果オーライよね!」
オペレーションルームで失神してしまったセレスティアや大臣達を横目に、私は満足げに頷いた。




