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3-4 古代魔法 vs 魔法リアクター ☆

私の次なる舞台は、アカデミーの大書庫だった。禁書庫の奥で、私は偶然にも一冊の古文書を見つけた。それは、現代の魔法体系とは全く異なる、『古代魔法』に関する記述だった。


「ねえウルちゃん、この魔法陣、なんかエネルギー効率悪くない?」


《古代魔法は、自然界の魔素を直接編み上げるのではなく、世界の法則そのものに干渉する概念体系です。理論上は可能ですが、制御が極めて困難。現代では失われた技術です》


私が古文書の解析に夢中になっていると、アカデミーの最長老であり、当代一の魔法使いと謳われるアウレリウス老師が姿を現した。


「小娘、その書から手を離せ。それは神の領域。人が触れてよいものではない」

厳格な老師の言葉には、確固たる信念が宿っていた。


「我らにとって魔法とは、世界の理を解き明かし、正しい手順と儀式を経て初めて行使できる神聖な『学問』であり『芸術』なのじゃ。過程をすべて無視するお前のやり方は、神聖な学問体系を土足で踏みにじる『野蛮』で『下品』な行為であり、魔法そのものへの冒涜なのじゃ!」


どうやら、私が神聖なアカデミーの常識を覆すのが気に入らないらしい。老師とアカデミーは、私の力を危険視し、その力を封じるか、あるいはアカデミーから追放するために、公式な場での決闘を申し込んできた。

決闘当日、闘技場は噂を聞きつけた貴族や騎士、魔道士、さらにはアカデミーの生徒たち、市民など五万人ほど集まり、満員の観客で埋め尽くされていた。国王や女王、セレスティアも見守っている。セレスティアは、心配そうな顔で貴賓席から見守っている。


「思い上がるな、異端者よ。古から伝わる真の魔法の恐ろしさ、その身に刻み込むがよい!いでよ、時空の蛇!」


アウレリウス老師が詠唱を終えると、空間がぐにゃりと歪み、周囲の景色がスローモーションになった。時間の流れを歪ませ、対象を永遠に閉ざされた時空に閉じ込めるという、古代魔法の奥義。


「うわっ、すごい!時空が歪んでる!ウルちゃん、これ、相対性理論的にどうなってるの!?」


《重力場を擬-似的に発生させ、時間の遅延を引き起こしています。非常に興味深い現象です。対抗策として、対象の時空座標を固定し、歪曲を相殺する『クロノ・スタビライザー』を提案します》


「要するに、時間を止め返すってこと!?……あ、今日の夕食のデザート、星空のゼリーが食べたいな…キラキラしたやつ」


《より正確には、時間の流れを『正常化』します。魔法リアクター、発動——思考にノイズを検知!マスター、集中してくだ…!》


私が指をパチンと鳴らした瞬間、世界が完全に静止した。 歪んでいた時空が正常化する過程で、私の脳裏に浮かんだ「星空のゼリー」のイメージが、時空座標固定の術式に致命的なバグとして混入。闘技場を含む王都中心部一帯の時間が、約20秒間、完全に停止してしまったのだ。


だが、異変はそれだけではなかった。 静止した世界の闘技場の上空だけが、まるでプラネタリウムのように深い夜空へと変貌し、誰も見たことのない、美しくも異質な星座たちが無数に瞬いていたのだ。


「……あ」


《盛大にやらかしましたね。あなたのデザートへの渇望が時空の法則と干渉し、この世界の座標軸とは異なる『異世界の星図』、あるいは『数万年後の未来の夜空』をこの空間に投影してしまいました。ですが、副次効果を確認。時空が一時的に固定されたことで、王都全体の空間座標データが寸分の狂いなく計測できました。これにより、超長距離・高精度の『転移魔法陣』の設計が可能となります。さらに、未知の天体物理データが膨大に収集できました。この世界の数学や物理学、哲学など宇宙に関する論が1000年は進歩するでしょう》


やがて、時間が再び動き出す。 異世界の星空は幻のように消え、観客たちは何が起きたか理解できず、ただアウレリウス老師の魔法が不発に終わったことだけを認識していた。


しかし、老師だけは違った。時空魔法の使い手である彼は、あの星空がただの幻ではないことを、この世界の法則では決してありえない光景であることを、魂が理解してしまった。自らが生涯をかけて手を伸ばした「神の領域」。その遥か高みから、まったく別の理を、遊び半分で顕現させてしまう存在。 常識や理論ではまったく説明がつかない力。その圧倒的な才能への純粋な嫉妬と、自分たちの価値観が崩壊することへの本能的な恐怖に襲われ、その場に膝から崩れ落ちた。


「貴様は…一体、我々に何を見せたのだ…?」

「(・・・・・星空のゼリーなんだけどね)」

震える声で問う老師に、私はただ、苦笑いを浮かべるしかなかった。


この日以降、私に公然と突っかかってくる者はいなくなった。その代わり、遠巻きに見つめる視線には、以前にも増して強い畏怖と、ほんの少しの…信仰にも似た感情が混じるようになったのだった。


「夕食、まだかな…」

私の呟きは、闘技場の喧騒に紛れて誰にも聞こえなかった。


《これだけの事象を引き起こした直後にもかかわらず、あなたの思考は常に食欲に収束する。その精神構造は、古代魔法以上に解析困難な研究対象です。ですが、認めましょう。あなたの食欲という極めて原始的(プリミティブ)な欲求が、この世界の物理法則を書き換え、文明の特異点(シンギュラリティ)を誘発しました。…いいでしょう。この宇宙的偉業には、相応の報酬が必要です。最高のディナーと、満天の星空を再現した特製ゼリーを私が約束します》



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