おれのかっこいい炎
「 いいかリミザ、ここでなにかしようなんて思うなよ?」
ラーラの杖をぶんどり、ムシールを攻撃したときと同じ気配のリミザに、ガットはいいきかせる。
「『なにか』って?ああ、もう、ラーラの杖は借りないよ。それよりもっとよさそうな杖、みつけたからね。 ―― さあ、カレン、『古の魔法使いの杖』をおれにわたしていいよ。ドラゴンに手も出せない魔法使いが持っててもしょうがないよね?」
「っはああ?そんなのおまえが持ったってしょうがねえだろ」
ガットがあきれるのに、リミザはあごをあげて「おれは、使いこなせるんだなあ」と得意げにこたえた。
「ガットもみただろう?おれのかっこいい《赤黒い炎》。なんと、あいつ、ほかの魔力を乗っ取れるんだよ。つまり、魔法使いの杖にある魔力を利用できるんだ」どうだすごいだろうというように両手をひろげてみせる。
「・・・『かっこいい』どころか、ズルくてダセエんだよ」あきれたようにガットは息をつく。考え方の根本は、やはり《リミザ》なところがやるせなくて怒れない。
「ええ!?なんで?賢くてスマートな魔法術だろ?」おどろいたようにリミザはラフィーとラーラの顔をみる。冷ややかな目を返される意味がわからないと訴えたとき、カレンがおおきくため息をつき、テーブルの上にさしだした両手のうえに、カレンの杖がよこたわりあらわれた。
「え?まさかわたすのか?」
ガットの驚きをよそに、リミザは高笑いした。
「そうこないと!いやあー、やっぱ長く生きてるひとって、こういう世渡りのうまさを共感してもらえるのかなあ。ありがっっとっ ごっ 」
うけとろうと身をのりだしたリミザの顎を、カレンが両手でつかんでいた杖が下からすくいあげ、続いて柄の部分が突き出されてリミザの腹にくいこんだ。
っぼごっ、と音をだしたリミザはからだをおるようにしてガットのあしもとにたおれた。すぐに起き上がってなにか言うと思われたのに、気を失っている。
「 ―― なるほどね。どうやら彼はまだ、《赤黒い火》に『つかわれる』ようなレベルってことなんだ。ガットが心配するほどの『魔族』には、なってないみたいだよ。 ―― いまのところ」
カレンが杖を袖でぬぐい、ラーラにだきおこされるリミザをおもしろそうにながめる。




