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引きずって森へ
「 ああ、この辺でちょうどいいかな。ありがとうございました。あの森をぬけて行くので、ここでおります」
司祭の男が立ちあがったので、農夫は馬をとめた。
「まあ、森をぬけたらとなりの国にでるもんな。そしたらはやいところ死体を教会にもっていったほうがいいぞ」
じゃあ気をつけてな、とここまでのせてくれた農夫の馬車がとおざかるのをみとどけてから、髭の男は荒縄で縛ってある棺桶を、軽く蹴った。
司祭の服をきた男が女のほうをみて、どうです?と意見をもとめる。女は手にしていた杖を空へほうりなげた。高く上がり水平に一回転したそれがまた手にもどる。
「とりあえず、平気みたい」
「それならいつもどおり森にはいってからにしましょう」
司祭の提案に髭の男がうなずき、棺桶を縛る縄の先をつかむと、肩にかけてひきずりはじめた。
この棺桶の中にいる男が死んでから、今日でもう八日経つ。




