みとどける
「なんだよ、わかってたのか・・・」
ようやくガットは顔をもちあげた。
「え?おれ、もう魔族になっちゃった!?」
リミザだけが顔を青くする。
「いや、あのときだけだ」
魔法の縄にしばられたままのガットは起き上がってすわりなおすと、安心させるように断言した。なにしろ、あのあとからはずっと《前のリミザ》のままだ。
だがここで、「どうかなあ」とカレンがお茶にくちをつけた。
「なんだよ、見てのとおり、虚弱でまぬけなリミザだろう」ガットが主張するのに横にいる当人もうなずく。
「だって、 赤黒い火、 だしたでしょ?」
「そ、・・・・」
「なんで知ってるのか、って?なにしろ『古の魔法族』なもんでね。コルックは説明をごまかしたけど、ぼくはいまのこの世界にある《決まり事》の枠内には入らない。だから、じぶんの意思でどこへもゆけるし、なんでもできる存在なんだ」
その微笑みは、優越感というよりも、この世に飽きてるのが寂しいというものだった。
「えー、なんだよそれー、なら『白銀のドラゴン』なんかとっとと退治してくれればいいのに」なんでやらないんだよ~、とリミザがもっともなことをきく。
「ここでのぼくの役目は、あのドラゴンがちゃんと消えてなくなるのを『みとどける』っていうものだからね。てだしはできないんだ。あれが、残っちゃったなんて・・・、とにかくきみたちできれいにしないと」
さいごをにごしてお茶をのむカレンが、ひどく大事なことを言ったのに、リミザ以外が気づく。
「『残っちゃった』って・・・・」
ラフィーがいやなことを聞いたように眉をしかめる。
「え?じゃあ『白銀のドラゴン』って、カレンが、まえに戦ったわけ?」
ラーラがゆびについたジャムをなめながらきく。
「じゃあ、あんたが、大昔の《白銀のドラゴン退治勇者一行》の魔法使いだったのか?」
白銀のドラゴンをねむらせたってのはあんたか、とガットが感心する。




