浮いて傾きひっくり返る
「おまえら、もめてる場合じゃねえぞ。 ―― 下からなにかくる」
揺れる足元をにらんだガットが、壁をよじのぼろうとしているリミザを引き戻す。
ゴゴゴゴゴゴゴ
地鳴りの音がおおきくなると、下からとつぜん突き上げられた。
「 っつ!? ちがうっ! 」
「 なっ、なにっ?」
「 浮いてる!?」
自分たちが立っている場所が空に浮いているとわかったのは、みおろしたそこに一部分が黒く抜け落ちた巨大な『迷路』がみえたからだ。
「 なになに?あの黒いとこって、あたしらが立ってるこの地面があったとこなの?」
ラーラはそのとき、どうしてこんなに『下』の景色がよくみえるのか、考えていなかった。
「 かたむいてる 」
ラフィーのつぶやきの意味が理解できるまえに、ぐう、と地面がさらに傾いた。
石の壁にたたきつけられそうだったラーラを拾ってわきにかかえたガットは、迷路の壁だったはずの場所に今は立ち、土の地面が壁のように垂直になってゆくのを理解がおいつかないままながめる。
むこうに立っているラフィーがどなった。
「 まだだ!傾きが続いてる! どこかにつかまって! 」
足を置いている石の壁はゆっくりと確実に、斜めになってゆく。
「ガット!あたしを離して!あんたの剣を杖がわりにこうやって!」
かかえたラーラが杖の先を坂の下に押し当て、二人が転がり落ちないようささやかな抵抗を試みている。ガットはラーラをはなし、剣の柄をつかんだ。
だが、こんな抵抗など、すぐに壁が垂直になって地面が天井のように上に ―― 。
・・・ひっくりかえされる・・・
「 っラフィー!上だっ!上になる地面に頭から突っ込め!!」
いうなりガットはラーラの手をひき、急角度になる石の壁と天井になりつつある地面の境をめざす。
「ガット!?なにをっ、あっ! 」
ひきあげられたラーラは足首が急な角度を感じた瞬間、ほこりっぽい土のにおいをかぎ、口のなかにざらりとした土の味を感じた。
そのとき、ラーラは思ったのだ。
《下から突き上げられた》と、感じた瞬間目にした、『魔術的』にも『心理的』にもなんの抵抗もなく ひとりで上へとんで逃げた リミザを、 ―― 決して許すまいと。
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