ついでに依頼
勇者一行へきゅうに身をのりだしたコルックが、「だから、」と声をひそめた。
「 ―― ムシールさまが戻ってこられないと、カシールさまはあのままということになる。王の病の原因を知っているのはわたしとアントンだけだが、エイジェスは気づいているだろう。だが、ドウドに知られるとやっかいだ。魔法研究所にはカレンの正体はしられたくないのだ。それに、わがトラス王国の王子が『すごい軽率な若者』だと世界中に知られるのも困る。どうか、ドラゴン退治のついでに本物のムシールさまをみつけてきてくれ」
「 『ついで』って、買い物のついでみたいに言うけど、・・・ ―― わかった。それって、つまり、おれたちの《ドラゴン退治》にムシール王子も同行させようってつもりなんだろ?王子の気もそれですむから。そんで、退治した手柄は王子がもってくってわけだ」
リミザが片眉をあげ、はかるようにコルックをみて、ひとりなっとくした声をだす。「ふうん。それでおれたちの『失敗はゆるされない』ってことか。もし『失敗』したらどうなんの?」
「ムシールさまの、状態による」
「『状態』って?」
眉を寄せ急に不安そうになったリミザが、困った顔をガットにむける。
「ドラゴンと戦うのに、無傷とかありえねえからな。それとも、ムシールを守りながらおれたちに戦えって?そんなの無理だ」
ガットの怒りをおさえた声に、コルックはいきなりがさついた笑い声をあげた。
「ムシールさまはずっとアントンに鍛えられてきたんだぞ。ドウドからいろいろ魔法道具ももらっている。いっしょに戦えばそれなりに役に立つお方だ。王家の剣も魔法術がつかえるから、かなり活躍するだろうが、 ―― ムシールさまは引くことがないできない性格だ。もし、ドラゴン退治が不利だとみたら、すぐにムシールさまをドラゴンからひきはなして戻ってこい。ドラゴンが追ってきたらアントンたちがひきうける。いいか、この国の王家の者は、秘術で蘇生させるのを禁じられているのだ。だから、ムシールさまを一度でも死なせるな。致命傷もおわせるなよ。この『失敗』は、ゆるされんからな」
はなしは終わったというようにコルックは椅子からたち上がり、おもいだしたようにリミザをみた。
「退治のためとはいえ、ながいこと《リビングデッド》でいるのはつらいだろう?この依頼を失敗しても、教会でうける《秘術》の代金は我が国が支払う。 ―― 先に、ムシール王子を 生きたまま 届けてくれたら、だがな」




