不安要素
11.
「それでは、これより再審査をはじめる」
コルックが口ひげをゆらし、重々しく宣言した。
《謁見の間》には、あのときと同じように、数段高いところにある大きな椅子に《ムシール王》がいて、きょうはしっかりと座りおさまっているが、勇者一行があいさつの頭をあげてから、緊張まるわかりのその顔のくちもとに、ぎゅっと力をいれている。そばにかたまって立つ《王様部隊》とこちらをおちつきなく見比べ続けていて、いいから落ち着け、とガットは声をかけたかった。
「 この十日間、わたくしどもはこの勇者一行をずっと監視し、死体のまま動いている《勇者》におかしなところはないか、魔法で外の者と連絡をとりあっていないかなど、あやしいところをさがし続けました。なにしろ、《リビングデッド》のままの勇者など、きいたこともみたこともないですからな」じろりとリミザをみて、鼻をならした。
「コルック、そういういい方はやめなさい。彼らは《王様連盟》に選ばれた《勇者一行》なんだ。わたしたちは、手のつけられない魔族や魔物の退治を彼らにお願いしている立場なんだから」
このまえとはちがい、しっかりとした態度でしっかりと発せられたその言葉に、《王様部隊》の大人たちがそろってムシール王の顔をみた。
「そりゃそうだ」にやりとして腕の刺青をたたいたアントンがガットにわらいかけた。
「 ―― 失礼いたしました。ですが、この若者たちに我がトラス王国の運命も預けなければならないのかと思うと、不安要素しか目につかなくなりまして」
若い王様に頭をさげた大臣は、眉をよせたまま勇者一行をみた。
その顔は、ガットが父親からよくむけられた顔と似ていて、心のうちの不安というより不満をあらわしていた。
『国の運命』を預かる《勇者一行》として、ほんとうならなにか言い返すべきだろうが、父親を思い出していたガットのくちは、うまくひらかない。じれたようにラーラがまえに出た。
だが、響いたのはアントンの声だった。
「なあ、あんたが目にした『不安要素』ってのはどんなだよ?おれは、このパーティーの《戦士》と手合わせしたが、さすが『サラマンドラの戦士』だけあって、強かったぜ。うちの兵士どもも、いまじゃガットを認めてる。まあ、馬の扱いはうちの騎兵のほうが上だがな」
たしかに。騎馬戦では小隊長の男に負けてしまったが、アントンと行った公開勝負は、どうにか引き分けることができ、そのおかげですべての兵士に認められることになったのだ。




