告知
《戦士》であるガットは髭面の筋骨たくましい、たよりになる男。《賢者》のラフィーはいかにも頭がよさそうなすました表情で、すこしプライド高め。《魔法使い》のラーラはいっけんして育ちの良さがわかる姿なのに、ひらいたくちからはすごく粗雑な言葉がでる。
この三人が仲間になってくれたから、どうにかここまでこられたのだ。
って、こういう感想、きのうもどこかで口にしたような・・・
首をかしげながら薬をのむこちらを、ラーラがなんだか情けない顔でみている。
おかしいな。こういう顔をされるのは、最初の二か月ですっかり慣れて、このごろはなくなったはずなのに。
「ありがとうラフィー。今日の薬、苦くなかったよ」
「でしょうね」言って、こちらが返したカップをいきなり木に投げつけた。
「 ・・・・あ、・・なにか・・・おれ、おこらせてる?」
割れて飛び散った破片を、三人がだまってみつめている。
「またなにか、面倒な病気にかかった?そんで、足止めしてるとか、あ、それで金がたりなくなったとか?」
まえもそれで先にすすめなくなったことがある。
はあー、っとガットが息をつき首をたれた。
「おい、ラフィー、おれもこんなこと毎朝やるの、ごめんだぜ」
あごの髭をかきながら、《戦士》はめずらしく小さな声をだす。
「同感です。ラーラは?」
《魔法使い》は「そりゃ、 」といいかけて、くちをつぐんでうつむいた。
「ごめん、おれ、ほんっと覚えてないんだけど、いま、どういうことになってんの?もしかして、《王様連盟》からなにか怒られたとか?」
覚えていないが、なにかまずいことになっているのかもしれない。
いえ、とラフィーが否定するが、こちらをみたまま続けた。
「 ―― そこには、まだ伝えていないので、なにも」
「おまえが死んだだけだ」
ガットが怒ったように付け足した。
そうか。《あとちょっと》とか、《どうしてここで?》という場面でそうなってしまったから、みんななんだか『やってらんねえ』みたいな顔をしているのかも。
「ええっと・・・・。そっか。おれ死んだのか。じゃあ、おれぬきでみんな戦ってくれたのか」
ため息がきこえ、ラーラが首をふって目をとじた。
「リミザ、きのうのことも覚えてないでしょ?」
「え?・・・まあ、うん。変だな、思い出せないな・・・」
「だろうな。なにしろ死んでんだからな」
ガットが自分の頭をゆびさし、にやりとわらう。
「いや、だって、いつもは死んでから蘇らせてもらっても、記憶もちゃんと残ってるよ」それじゃなきゃ、戦ってる最中に蘇ったばあい、困るだろう。
そうですよね、とラフィーがなにか考えるように顎にこぶしをあててこちらをみた。
「リミザ、死んだ《勇者》はどうなりますか?」
「だから、まいかい《賢者》の蘇りの秘術で生き返らせてもらうか、もしくはそれがつかえる司祭のいる教会にいって、生き返らせてもらうかしてるよね」
「そうですよね。ところが、あなたは『生き返りの秘術』をうけていないのに、生き返った」
「・・・・・はい?」
「勝手に生き返ったんです。死んだまま」
「・・・・・ん?えーっと・・・」
だからよ、といきおいよく立ち上がったガットが、「おまえ、いまも死んでるんだよ」と目の前にきてしゃがみこんだ。
「戦いで死んだんじゃなくて、三日まえ、宿でやすんでたら、ベッドにいたおまえが急に苦しみだして丸まって、しばらくうめいてたら、こんどは急に静かになったんで、ひっくりかえしたら、もう死んでた」
「 は? 」




