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勇者死んだままパーティー契約続行中 ― 白銀のドラゴン退治 ―  作者: ぽすしち
― その7 ―

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44/133

たいへん


 三人で目をみかわしたとき、リミザがスコーンに手をのばしながら、「じゃあさ、もしかして、」とジャムにも手をだす。

「 双子のお兄さんをヤっちゃったかんじ?じぶんっ ぐっつぼ っ」

「やだ、リミザったら、お行儀悪いんだから」

 むこうまで飛んでゆきそうだったスコーンとスプーンにのったジャムは、ラーラの魔法でゆっくりと皿に着地した。リミザの肩をつかんでじぶんのほうへむけさせていたラーラは、テーブルの下でリミザの腹にめりこませた拳をゆっくりもどしながら、ついでにテーブルに突っ伏しそうだったリミザの体勢ももどし、「わたしもお菓子をいただこうかしら」と切り分けてあるパイに手をのばす。


 ガットとラフィーが無言で会話し、このお茶会をきりあげようと決めたとき、「あー、きみらが思い浮かべたようなことはない。あのね、わたしは王位に興味ないし、ほかの誰もわたしになんて期待していないよ」と王様が力なくいって、目の前のケーキにフォークをさした。

「言っておくけれど、今起こってるのは『後継者争い』とは関係ないものなんだよ。いいかい、順番でゆくと、まず、兄が行方不明になって、すぐに父が倒れた。それから三日ほどしてコルックがわたしをむかえにきたというわけだ。だが、むかえに来たコルックは城につくまで、ただ、父がわたしを呼んでいるとしか言わなかった。来てみれば、兄はいないし、父はしゃべれない状態で、大臣たちは混乱していた。これはカレンがいない間におこったことで、魔法研究所の魔法使いも役にたたない、とコルックは怒っていたが、ようは、倒れて数日たっていても、父の病気の原因がわからなかったのさ。もどってきたカレンが魔族の呪いじゃないかと言ったが、それはエイジェスに一蹴されたって」


「ここにいる魔法族にも治せないほどの病気ってことか?」ガットはラーラをみた。ここの魔法研究所は、歴史があって規模も大きい。


 《ムシール王》はケーキをふたくちで食べ、首をふった。

「それに、兄の行方もわからないままだ。どうやら自分で城をでていったようで、魔族や盗賊が侵入したようなあともない。それを知った父が、つぎの日に倒れ、治りそうではないと大臣たちが納得してからわたしをむかえにでた、というわけなのさ。 わたしはもともと王様になる気なんてすこしもなかったから、ここにきてから毎日がほんと大変なんだ。そりゃ、大臣たちも大変なのはわかるけど、こっちは兄のムシールのふりをしなくちゃならないんだよ。わたしとはちがって、しゃべり方から立ち居振る舞いすべて、王になるべく教育されていたんだから、とても真似なんてできないよ。だから勇者パーティーにあうときはなるべくしゃべらないようにって大臣たちには言われてるんだ。 でもさ、せっかく会うんだからやっぱりしゃべりたくなっちゃうわけさ。そしたらクチコミであんな評価されちゃって、ほんとがっかりなんだよ」



 なるほど、とガットは納得した。

 この若い王様は、やる気がないのではなく、事の重大さをあまりふかく考えていないのだ。いや、深く考えないようにしているのかもしれない。急にせおわされたこの国の王様代理という立場は、普通に考えればありえないほど重い。それにともなう兄の失踪と父親の急病だ。




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