夢をみる
「ラーラの《陽の光アタック》のせいで、肌が焼けたんじゃないですか?」
むこうで倒木にこしかけたラフィーが自分用にだけいれたお茶をのみながら、おはようございます、とあいさつしてきた。
ゆうべの焚火あとそばには、ガットがいつものように布袋を頭にかぶって寝ていたが、鏡をしまったラーラがその足をふみながら、「ごめんねリミザ」とよってきた。
「いや、平気だって。なんか、うん、へんな夢みちゃっただけだし」
「夢!?」
ラーラがびっくりしたように立ち止まった。
「うん。なんかさ、このパーティーでおれが死んじゃってて、それでもみんながドラゴン退治しようとしてるとか・・・ちょっと感動的な感じだったけど、複雑な心境になる夢」
「ほお、それはまた、とても興味深いですね」
ラフィーがカップをかかげるようにして口の片側をあげる。
「いやあ、やっぱさ、自信のなさとかが、そのへんに出ちゃうんだなあって、あらためて感じたよ。おれなんて、《勇者》ってなまえだけど、ほら、こんな虚弱体質だしさ・・・」
そういってみた自分の腕はとても剣をふりまわせるとおもえないほど細く、肌はまっしろだ。
「・・・なんかさ、ほんと、みんなのおかげでここまでこられたけど、ほんと、」
「ねえ、リミザ、 あのね、それ、きのうもきいたよ」
「え?『きのう』?」
「きのうも、なんかうなされてて、ガットに顔たたかれて起きてから、いまとおんなじこと言ってた」
「あ。・・・そうだった?おっかしいなあ、おれ、覚えてねえわ」
はは、と力なくわらうのを、ラーラが同情をこめた顔でうなずいてくれる。
「しかたねえだろ。おまえのその頭でなにか考えるとか覚えるとかが無理だろうしな」
いきなり起き上がったガットが、頭の袋をとりながら伸びをした。
「ひどいな、ガット。そりゃおれは虚弱体質でからだはぜんぜんだめだけど、頭はどうにか普通ぐらいの働きはするよ」
自分の頭をゆびさし反論すると、同意してくれるはずのラーラはただ微笑んでうなずくだけだった。
「これ、 ―― 毎朝やるのも面倒ですね」
お茶の小さなカップを膝にのせ、ラフィーが眉をあげてガットとラーラをみた。
「『面倒』って?」
お茶をいれるはなしか?いや、ラフィーはいつだって自分の分しかいれない。
膝においたカップに、どこかからだした瓶のなかみをふりかけると、それをもってこちらにきた。
「はい、これは今日の分の薬です」
「うん?ありがとう」
《賢者》であるラフィーから薬をもらうのはいつものことだ。
なにしろ虚弱体質なので、ここまで来る間にも、さまざまな病気にかかり、そのたびに新しい薬を作ってもらっている。あとの二人にも、ケガをしたときガットにはずっとおぶってもらったり、ラーラには貴重な薬草をみつけてもらったり、と、すごく世話をしてもらってる。