城に行く前に
5.
そう。問題は山積みだった。
「いいか、王様におまえのことがばれたら、おれたちはきっと、即、『退治依頼中止のパーティー』になって、おまえにかけてある《リビングデッド》の《黒魔術》もラフィーは解かなきゃならない。おまえはそこですぐ、ただの『腐った死体』になる。だからとりあえず、城にはいるときはどうにか魔力の気配をかくせ」
これから王様との謁見をひかえ、『狂暴凶悪白銀のドラゴン退治パーティー』で登録している四人は、朝から宿でミーティングをしていた。
ガットはベッドにこしかけるリミザをにらみおろしいいきかせたが、リミザは眉をよせてから、くびをかたむけた。
「んん?ラフィーが解いたらすぐ? そうかなあ?だっておれ、みんながなにもしないのに生き返ったんだろう?それに、いまの状態だってラフィーの《黒魔術》のおかげ ――『だけ』ってわけじゃなさそうだしさ、もしかしたらラフィーが《リビングデッド》の《黒魔術》を解いても、このままかもしれな・・・・」 みんなの視線に気づいたのか、ようやくくちをとじた。「・・・ごめん。なんかおれ、このごろへんな自信ついちゃってさ」
「わかってます。その『自信』のせいで、つい『くちがすべる』と言い訳しはじめたのは三日前ですから。 ねえ、リミザ、きみはそうやっていまみたいに毎日謝るのですが、自分で言ったことをおぼえていないのですか?」
「う~ん・・・そこなんだよなあ。ここ数日のできごとでも、はっきり覚えてられることって少ないんだよ。あ、ラーラに腹を殴られたのは覚えてるけど」
困ったように首をまわす勇者に、ラーラがかけより隣に勢いよくすわった。
「リミザだ!ねえ、いまは、《まえのリミザ》だよね」
「『まえ』もなにも・・・おれとしては区別ないんだけど・・・」
「いえ。区別はあります」
窓際に立ったままのラフィーが指をたて、ガットとうなずきあう。
「この三日間、あなたのようすを観察しましたが、まず、ぼーっとしてるときと困ってるか疲れた顔をしているときは、《元のリミザ》でしょう。ですが、わたしたちとしゃべりはじめると、―― どうやらあなたの頭にはえはじめた角のように、べつのリミザが顔をだしてくるようです」
「『べつ』?」
「まだ、王宮にある古い書物をあたれていないので、確かではないのですが、 ―― あなたの中に、『魔族』としてのリミザが出来つつあるのではないかと」




