『秘密』にしてね
「ラフィーだって困るよなあ。それに、自分の寿命をけずっておれにかけてくれた《黒魔術》がおかしいぐあいにかかってるって、きっとショックだよなあ。おれも、申し訳なくてさあ。だから、かかってるフリしたほうがいいかなって思って」
「まあ、そうね。ラフィーも、いままで思ってた人物像とちがってて、あたしもちょっと、・・・戸惑ってるとこ」
「ああ、ガットも実は頭つかうのが好きとか、意外すぎたよなあ」
「でしょう?なんか二人とも、ここまできていきなりキャラ変するとか、なんなの?ってかんじ」
「あ~、それもあって、うなってたのか。自分には、それがないって?」
「っべ、べつに、そんなこと、」
「ラーラはさ、そのままでいいんだよ。まじめで、ちょっとくちが悪くて、冷静に状況を判断できる魔法使いがいてくれたから、おれたちはここまでこられたわけだし」
「でもいまは、あたしだけ、・・・リミザになにもできない」
「ねえ、ラーラ。おれはもう、ただの死体だよ。だけど、その死体を《勇者》にしたままで、ラーラだって自信がないのに、《ドラゴン退治》に行ってくれるんだろ?それって、おれのためだよね?ラーラも、おれのことを思って、おれがほんとは死んでるってのを、《王様連盟協議会》に報告しないでいてくれてるわけだろ?」
「・・・まあ、うん、・・・そっか・・・」
「おれがこの状態でどこまでできるかわからないけど、ラフィーの指示がなくても、つかえる《魔術》をかたっぱしからつかってみるよ。なんか、このからだになって、魔力もずいぶんあがったんだ」
「リミザ・・・・」
「だからさ、おれがずっと起きてるとか動けるとか、このことはまだちょっと、ラフィーとガットには黙っててくれるかな? ―― ラーラとおれだけの、『秘密』ってことで」
リミザがラーラに手をのばす。
その冷たいゆびさきにふれ、ラーラはうなずいた。
「 うん、 ―― わかった」
ラーラはいま、じぶんがすべきことをみつけ、しっかりとうなずいた。




