できることは?
「その不安をすこしでも軽くするためにも、王宮の図書館がつかえたら、リミザの症状について調べてくるからよ。もしかしたら、みつかるかもしれねえだろ」
ねえガット、あんたが『図書館』なんて言葉をつかうどころか、じつは本を読むのが好きだとか、その筋肉といままでの言動で、予測できたとおもう?
「まあ、とにかくお前は部屋でちょっとやすんでろよ。おれとラフィーで、できることはやるからよ」
「そうですね。ガット、さっきの指輪の件ですけど ―― 」
男ふたりはラーラからはなれ、顔をよせあい声をひくめて何かのはなしあいをはじめた。
ガットとラフィーが、こんなふうに近い距離ではなしこむところなんて、いままで見かけたことなんていちどもなかった。
だって、知恵が武器の賢者と、肉体が武器の戦士でしょ?
共通の話題もないだろうし、おたがい興味もないだろうし・・・。
あたしがリミザと部屋でお茶したり、街を探索したりしてるときにも、そりゃ、ラフィーとガットは次の日のうちあわせはしてたかもしれないけど・・・、そのあとはきっと別々に行動していただろうし、戦闘だって、リミザを中心としてたから・・・。
「ラーラ」
「な、なに?」
いきなり、ガットにつよい声でよばれてわれにかえる。
「きまったことがあったら、今夜、はなしますから」
ラフィーがめずらしくやさしいこえをだす。
「え? あ、うん、」
「部屋でやすんでろ。おれたちは出るが、気にするなよ」
「・・・・うん・・・」
賢者と戦士には、この状況でできることがあるってわけだ。
あたしは・・・・
「あ、あたしもなにかできること、ある?」
あるはずだ。だって、この二人にはやることがあるんだから。
でも、あたしにはそれが自分でおもいつけない。




