存在
「王様への謁見も、申し込んでから三日ほどかかるそうですよ」
窓のむこうにある城をみやり、ラフィーが司祭の上着をぬぐ。
「はあ?《ドラゴン退治のパーティー》を優遇するとかねえのか?」
じぶんの武器袋を壁ぎわにおき、ガットがあきれる。
「まあ、そのぐらい時間があったほうがわたしたちにも都合がいいかもしれません。そのあいだに、もういちどリミザを起こしてみて、ようすをみましょう」
「ああそうだな。そっちのほうが大事だったな」
「あの~・・・」
すっかり、存在を忘れられているようで、ラーラはそっと手をあげた。
「なんだよ?なんかおとなしいじゃねえか。腹でもくだしたか?」
ガットがいつものようにがさつさをあらわして聞くが、ラーラはいつものように『リミザじゃないんだからくだしてないわよ』とは、かえせない。
「・・・ちょっと聞いておきたいんだけど、あの・・・、リミザがこの状態でも、あたしたちって、ドラゴン退治、しにいくわけ?」
ラーラとしては、あたりまえの質問をしてみただけだ。
それなのに、ガットは信じられないものをみる目を返してきた。
「 ―― あたりまえだろ?・・・なんだよ、ラーラ、どうした?」
『どうした?』それはこっちのセリフだ。
「あ、あのさ、そりゃ、ドラゴン退治も大事だけど、リミザがこんなことになっちゃってて、そっちのほうが、大変だよね?」
ああまあな、とガットは腕をくんで、ラフィーをみた。
「でも、そっちのほうはすぐにどうこうできねえだろ?とりあえず、王様に挨拶したら、王宮の図書館がつかえるかきいてみようぜ。ここの国ってたしか、かなり昔から本をあつめてたってきくしな」
「ああ、わたしもそれを考えていました。では、そちらはガットに任せます。わたしは街の教会にいって、王室付きの司祭に紹介してもらえるか確かめましょう」
「なんだよ、ラフィー、おまえの名前をだせば、そんなのすぐに通るだろう?」
「いや、さすがにこんなところでは無理でしょう。・・・そうか。ガットの指輪をかりてもいいですか?あなたの家の紋章がはいったあれなら、かなり効力をはっきするでしょうから」
またしても、ラーラの存在をぬきで、ふたりの会話がすすむ。




