みかえり
「じゃあつぎは、『黒い聖書との契約』の説明をしろよ。 ―― さっきリミザとしゃべってたとき、なんであんなにあせってたんだよ?」
ひげをつまんだガットは、ばかにするでもなくラフィーにきいた。
「・・・きみが、そんなに耳と記憶力がいいとは意外でした」
「ふだんは気にしねえように過ごしてる。だがな、いまは細かいことも全部が気になる。 ―― とりあえずは、いまのこの状況をちゃんと確認してえんだよ。 いいかラフィー、おれたちにまだ説明してねえことを全部吐け。さっきラーラにお茶をだしたリミザ、ちょっと、おまえの『下僕』っぽくなかったぜ。あれじゃあ生きてた時のリミザだ。 たしかにおれもラーラも、そういう、《自由に動いてしゃべるリミザ》になってほしいとは思ってたけど、おまえのようすをみて気がついた。 ―― それじゃあ、『ダメ』なんだな?」
髭をさわるのをやめ、棺をゆびさす。
「このままおれたちに黙ったまま先に行けると思ってんのか?いいか、生き返ったリミザに《黒魔術》をかけたところから、おれたちは同じ穴にはまってんだよ。さっさと吐け」
ガットの催促に、ラーラもなにかを感じたのか、とりだした杖を、かたくにぎってラフィーをみた。
戦士と魔法使いにつめよられた賢者はついにあきらめの息をついた。
「・・・『黒い聖書』は、魔族のもので、・・・魔族の『神』とつながることはできても、ソレから力をかりるには、《魔族》ではないわたしたちは、見返りを与えなければならない・・・。《黒魔術》はそういう条件で成り立っています」
「『みかえり』!?」
「そうか、寿命か。だからこそ、《賢者》にしか許されないってことか。『禁断の聖書』は命をうばう、ってじいさんのはなし、思い出したぜ」
「え!じゃあ、ラフィーの寿命が!?なにそれ!どうして言わないのよ!」
ラーラは杖の先で棺桶をさした。
「言ったところで、どうなります? ―― 死んだリミザに『リビングデッド』をかけられるのはわたしだけで、わたしは、・・・・リミザが、《ゾンビ》になるのなんて見たくなかった」
むっとした様子で《賢者》は肩をすくめる。
「なに怒ってんの?リミザだって好きで死んで、生き返ったわけじゃ・・・ないと思うよ」
ラーラがめずらしくラフィーをいたわるよう肩をなでる。
それをはらいのけ、「さっきのことです」と《賢者》は棺桶をゆびさした。
「見たでしょう?わたしが《指示》していないのに、彼はきみにお茶をだし、わたしに意見しました」
『 でも、あなたの旅はこの人たちといっしょにしてるものだから、
この人たちと仲良くしたほうが、旅はずっと良いものになるでしょう?』




