処分
リミザは翼を大きくひろげて静止しているのに、落ちるでもなく空中にいる。
なにかの『力』がそのからだをそこにとどめているが、ガットはその『力』の正体を知りたくはなかった。
両手をにぎり合わせるようして前にだしたリミザが、それを勢いよくふりあげておろした。
っゴッ ヅ
空気がゆれ、いきなり出現した巨大な赤い火の玉が、ふしぜんなほどゆっくりと偽物のドラゴンへと落ちてゆく。
次の瞬間、山自体が赤黒い炎を吹いたかのように、山のくぼみがぜんぶが燃え上がった。
滝の水が消失し、白い岩壁が黒くなり、炎のまきおこすゴオという音だけたて、ドラゴンは一瞬で焼失した。
「 ・・・・・な、んだ・・・よ・・・」
鳥肌がおさまらないガットはまだ浮いたままのリミザから目がはなせない。
「ガット、・・・ あれ、リミザだよね・・・?」
めずらしく、こころぼそげな声でラーラがきいてきた。
リミザの背のでかい翼が数度はばたき山の上を旋回しはじめた。頭にでていた角はもうみえない。
リミザは鳥のように、ただ、ぐるぐるとまわっている。
ドラゴンがあった場所には黒く硬い残骸が焦げ固まった山がすこしの金をのぞかせていたが、ラーラがそれもまとめて砕き、風でとばしてしまった。
滝の水はもどり、黒くこげたはずの山の岩肌ももとのように白くなっている。
ようやく上からおりたったリミザが一瞬で翼をしまい、両腕を上にあげながら駆け寄った。
「みた?みた?みた?おれさあ、もうこんなにハネがでかくなって、すっげえとべんの!鳥みたいに!」
言ってることも気配も《前のリミザ》なのに、いまの力をめにしてしまった仲間ふたりはちょっと微妙な笑顔をうかべてしまった。




