上昇 反転 落下
31.
「 『処分』 って、これを?山の谷底に落とすの?」
ラーラが杖をかまえ、重そうだなあ、と面倒そうに眉をしかめる。
「 あ、おれ、やるよ 」
「え?リミザ、もう自分いがいも持ち上げられるようになったの?」
「まあ、見てて」
得意そうにわらったリミザの気配が一瞬で禍々しいものにおおわれ、いきなりぬぎだした服がラーラの顔になげつけられたとき、バサリ、と翼を打つおとがして、風がまきおこった。
とびたつ瞬間のリミザと目が合ったガットは、からだが氷につけられたように動けない。
細いリミザのからだを浮かべるには、じゅうぶんすぎるほど大きく、真っ黒でつややかな翼が数度はばたいただけで、リミザは山のこのくぼみを脱出していた。
「 ・・・・ う そ ・・・ 」
ラーラはリミザの服をにぎりしめ、空高くとんでいった影を追う。そのシルエットには、背中の翼はもちろん、頭にヤギのような長い角がある。
「 あいつ、どこまで行く気だ?」
まるで、太陽にむかうように高くとんだリミザがふいに反転すると、落下をはじめた。
「 ・・・おいおいおい、マジかよ。 ラーラ、おれたちをむこうの崖にとばして壁をつくれ」
「わ、わかった」
落下速度に見とれる場合ではないと気づき、ラーラはあわててくぼみからはなれた岩場へガットとともに移動し、最強強度の壁をつくる。
黒く長細い影として落ちてきたリミザが、山の上で急にとまって翼をばたつかせる。
いっしゅん、こっちをみたような気がした。
みじかいです。つぎの章で終わります




