手出し
28.
魔物にかかえあげられたリミザは、あぐらをかいていたあしをのばしたが、顔は間抜けなまま固まっている。
「 さあ、こいつをどうにかされたくなければ、その剣をすてろ」
勝ち誇ったように赤い魔物はリミザを肩にかついでみせた。
「どうにかって、・・・おまえ、いま、そいつの石化なおしたのか?それで足がのびたのか?」
ガットが疑うように目をほそめる。
「・・・いや、べつになにも・・・。 持ち上げたからだろ。・・・っていうか、この子ども、どうして魔法術の縄でしばりあげてあるんだ・・・? あ!もしかしておまえら、どこかのこどもをさらってきたのか?悪党か?おまえたちほんとは《悪党一行》か?」
「ちげーわっ!その縄は、 その、 ―― とにかくリミザをはなして!」
むこうからラーラがさけぶのに魔物はにやりとわらった。
「いや、だいじな『盾』を捨てるわけないだろう?おい《戦士》よ、おれがこのこどもをかついでるかぎり、おれに手だし」
ザンっ
ガットの剣が魔物の顔の右についていた翼を斬り落とした。
「 っぐぎゃあああっ!!なんできったあ! 」
「いや。手出しはできるってのを教えてやろうかと」
地面に落ちた翼にガットが剣をつきたてると、もがくように羽をまきちらし、赤い翼はあっというまにきえた。
「だ、だってこっち、こどもをかついでるだろ!みろ!あとちょっとでおまえの剣はこどもの脇腹をえぐりとってたぞ!」
「あー、ちょい当たったみてえだな。すまん、リミザ」
脇の下あたりの服が切れているのをみつけてガットはあやまった。
「こわっ!なに?おまえらこわいって!こどもに対してもっとこう、優しさって言うか、人間らしさっていうか、もってねえの?」
「・・・こどもこども、うるさいなあ・・・・」
魔物の肩にだらりとかつがれた《勇者》がぼそりとつぶやいた。
こんなところまでお付き合いにきてくださる方に感謝です!今月は週中であげることになりそうです。よろしければのぞいてやってください。。。。。




