固まってるけど石じゃない
27.
ギャーハハハハハハ
上から下品な笑い声がふってきた。
「《子ども》を放ったままの《勇者一行》とは笑わせる」
翼のあいだにできた『卵』をつくり変え、『頭だけの魔物』になったものが、頭の両側にある髪と同じ色の翼で星の明るい夜空をせわしなくとびまわり、《勇者者一行》をばかにしたようにみおろす。
ふいに下降してリミザの上をとびまわると、上をみて口を開けて固まっているのを確認し、「ん?この子ども固まってるけど石になってないな」と不満そうにくちにした。
「 さわんなよっ 」
魔物の頭の左がわの翼にガットの剣がふりおろされたが、魔物の赤い髪を散らしただけでよけられてしまう。
「 ばかめっ、わたしに傷をつけようなどっ、ギャっ 」
また浮上しようとした魔物の右側の翼をラーラが素手でつかんでいた。
「 ―― 目のあった相手を石にするとか、クソ古い魔法術つかってんじゃねえぞ。こっちはとっくに術式を解いて対応しとるんじゃ。 ほら、はやくリミザを元にもどせ。石にしないで固まってるとか、どこで術式を変えた?あん? 」
「いやいやいや、わたしは変えてない。ほんとだって!こっちもおかしいなあ、っておもったところで、ギャアっ」
「このハネねじりきんぞ? はやく解けって、きこえなかった?」
「いたいいたい!ほんっとに、しらねえって ―― いってんだろっ!!このクソ魔法使いがっ!」
みずから頭をまわすと翼をねじきった魔物はまた上へととんだ。
ガットとラーラも一緒にとびあがり、空中戦がはじまるが、下からみあげたラフィーは聖書をかかえ考え込んだ。
ガットとラーラはリミザに手をだされて頭に血がのぼり、むきになっていてつぎつぎに攻撃をしかけているが、あの翼のはえた『頭だけの魔物』は、もう翼もつかわずに虫のようにとびまわってよけているだけだ。あの魔物はたしかに魔力は大きいかもしれないが、ラーラの言った通りその術はすべて古く、最新の魔法術を研究し続けているラーラにはかなわないだろう。
このあと二人が冷静になれば、ラーラが魔物を捕獲してガットが頭を刺し、リミザの状態も元に戻るだろう・・・。
が・・・、




