作動
25.
「ガット!」
「やめて!!」
賢者と魔法使いの声をふりはらうように剣を振った。
「うわあ・・・なんで?」
リミザの驚いた顔は信じられないものをみる顔だ。
これはきっと《前のリミザ》だろう。
「 『なんで』ってそりゃ、けっきょくは、こうしないと進めねえだろ?」
ガットは斬り飛ばした蝋燭の火がむこうで青黒く大きくなってから消えるのをみて剣をかまえなおした。
「ちょっとお!!なに相談もなしでやってくれてんのよ!」
ラーラが杖を両手でもちあげるのを、ラフィーがおさえながらうなずいている。
「そうですよ。このろうそくの火を消すのが台の中の卵を孵すためのものだと、さっきわかったじゃないですか」
「うるせえなあ。だから、さっさと孵らせたほうがはなしがはやいだろ?けっきょくこの『罠』をぜんぶ作動させねえと、《ドラゴンの巣》にはいれねえんだから。 ―― そうだろ?」
最後をリミザにきく。
キョトンとした顔のリミザが、眉をよせると、にやりとしてみせた。
「 ガットは話しがはやくてたすかるなあ。そうなんだよ。おれたち、こういう仕掛けのある『お宝』とか『秘宝』とかは、ぜんぶすっとばしてここまできちゃったからさ。せめて最後ではしっかり味わいたいよなあ」
「『すっとばした』のは、あなたが『ま、いっか』と素通りするのを決めたからじゃないですか」
「そうそう。あたしなんかほんとは、《ダーグの森》の《ビッグエッグ》ほしかったんだから。あれ、すっごい貴重で《勇者一行》にしかとる権利ないんだよ」
賢者と魔法使いが文句をつけるのに、勇者は戦士が蝋燭をとばした台座をさしてみせた。
「ラーラ、『ビッグエッグ』ならここに」
「ちがーう!こんなんじゃなくて、でっかい卵みたいなキノコのことなの!」




