第9話 シュミット様の姉君との出会い
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シュミット様に話をして、姉君の仇を打ったことを伝えた。シュミット様は驚いて、「あの事件の犯人ってカール君なの!」と驚いていた。
「何にしろ、これで第1皇子の手ごまはつぶしました。今後何か活動するにしても、大きく阻害されることになるでしょう。しばらくの間シュミット様たちは安全だと思われます」
「これ以上姉上に危害が加えられてたまらないからね。ありがとう」と言って、手を握ってきた。
お礼は無しかな?まあ、王族にコネができたのだからいいと思わなくちゃな。
そんなこんなでシュミット様と付き合うようになった。「平民のままだと付き合いが厳しいから」という名目で、シュミット様の護衛兼相談役という地位につけてくれた。それと騎士爵の地位をくれた。
「一応王子だからね。このくらいは問題ないよ」とシュミット様は笑って言った。
最下級の貴族位だが、一応これで王宮などの王族の住まいに入れるようになったとのことだ。
すごいな、第2皇子の権力は。
ところで貴族になると姓をつけなくてはならないそうだ。元のハイフィールドだといろいろ都合が悪いので、前世の名字のクトーとすることにした。
「クトー?面白い姓だね」と言われたが、これなら他の貴族の姓とダブることもないし、良いだろうと言われた。
そんなこんなでお忍びに付き合ったり、一緒に遊ぶようになった。
町は危なくないかだって?悪党たちは先に脅かしておいたから、まあ変な奴に絡まれることはないだろう。
あと、第1皇子の手ごま達の内、大物は処分したので、何か行動を起こすのは難しいだろうし、小物ならすぐに対応可能だしね。
夏が近づくある日、「もうすぐ夏休みだよね。もしよかったら、僕と一緒に離宮に来ないか?」とシュミット様からお誘いがあった。
おう、王族の離宮とは、ちょっと行ってみたいな。
お前は王族だったときに行ったことがないのかだって?
王族の離宮はたいてい王都の郊外か、観光地にあって、王族がバカンスや憩いを求めていく場所なんだが、俺は4男で側室の母親から生まれたので、離宮を使う権利がなかったんだよ。
使えるのは、正妃から生まれた王子王女か、せいぜいスペアとしてカウントされるくらいの上の皇子ぐらいまでかな。
「ぜひともお供させてください」どうせ行くところもないし、商売でも集中してしようかと思っていたぐらいだからね。
ちなみに今までに稼いだ儲けの額はかなりのもので、100億マルは超えていると思う。最近は増えすぎて数えきれなくなっているからな。昔居たハイフィールド王国の国家予算以上の財産だ。やばくなったらいつでも逃げ出して、どこか僻地で安楽に暮らせるだけの蓄えには十分だ。
夏に入り、俺は王子ともに離宮に向かった。レッドハンド侯爵領の中にある湖の側にその離宮はあった。
「この離宮には、母上と姉上が暮らしているんだ」と王子が話してくれた。
王女の事件以来、娘と孫娘が心配な侯爵は、自分の手が届くこの場所に二人を住まわせていた。当然厳重な警備を敷いていた。
さて、離宮に着いたが、王子は「部屋の用意はさせているから、その部屋で待っててね」と言って、どこかに行ってしまった。
うん、これは嫌なパターンかもしれない。さっきからメイドや使用人たちの目が怖い。まるで敵を見るような目だ。元平民風情などここで十分と納屋か物置小屋、最悪馬小屋にでも追いやられ、そのまま放置されるパターンかもしれない。
まあ、馬車で旅行できたし、途中の宿は飯も部屋もかなりいいところに泊めさせてもらった。離宮には入れたし、きれいな庭もちらりと見れた。とりあえず案内されてひどいところだったら、王都に飛んで帰って、商売でもしよう。
「カール殿、こちらに」と一人の執事がやってきて、俺を案内しはじめた。
後についていくと、離宮の屋敷からどんどん離れていく。あっこれは想像通りかも、と思いながら付いていくと、小さな家にたどり着いた。
文字通り家だった。かなり大きい家で、お屋敷まではいかないが、立派な家だった。
中に案内されたが、2階が寝室と書斎、応接室のようになっており、1階は大きめの食堂に厨房、風呂などがあった。
メイドが何人かと年配の執事がおり、俺の世話をしてくれるとのことだ。
予想と外れたが、かなり好待遇で正直嬉しい。
「長旅でお疲れでしょう。もしよろしければ、先に風呂などご用意させますが」と家付きの執事が言った。
年のころは60代か、老いてはいるがかなり筋骨隆々の男だった。
「風呂ですか、良いですね。お願いしたいけど、水や火魔法は誰か使えますか?」
「私が使えますのでご安心を」と執事が言った。
「それではお願いします」
すぐに風呂の用意がされ、俺はゆったりと風呂に入った。元日本人だからね、風呂はうれしい。
すごく気持ちがいい、風呂って最高、と思っていると、メイドが2名やってきて、「お体洗わせていただきます」と言ってきた。
「いや、良いです。一人で洗えます」と言ったが、「これは仕事ですので」と言って取り合ってくれません。
押し問答をしたのですが、無理やり洗われてしまった。それも文字通り全身を丹念に洗われた。
ヘロヘロになった俺に、メイドが「もし夜の御勤めがご入用でしたら、いつでもお呼びください」と耳元でささやいて去っていった。
借りた新しい服を身に着け(着ていた服や汚れものはメイドさんに奪われ、洗われている最中だ)、バルコニーで涼んでいた。
バルコニーから湖が見え、とても美しい景色だった。
しばらく涼んでいると、執事がやってきて、「王子様達がお呼びですのでご案内します」と言ってきた。
服装はと聞いたら、そのままでいいとのことなので、俺は執事にと連れられて離宮の本宅へと向かった。
離宮の庭に、シュミット様と女性が二人いた。一人は母親だろう。とても二人の子持ちとは思えないぐらい若々しく美人な女性だった。
もう一人は仮面をかぶり、裾の長いスカートをはいだ女性だった。
「カール来たね。紹介するよ、母上と姉上だよ」とにこにこと言った。
綺麗な女性が「こんにちは、カールさん、私はジョセフィーヌと言います。シュミットがお世話になっているみたいね」と言いながら、挨拶した。
「姉のオリビアです」仮面の女性はそれだけ言って、口を閉じてしまった。
「初めまして。私はシュミット様にお世話になっているカールと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「カールは魔法使いで、剣も使えるんだよ。頭もいいし、本当に頼りになるんだよ」とにこにこしながら言った。
初めて会ったシュミット様の母上は本当にきれいだった。
きっとお姉さんもかなり美人なのだろう。ただ、事故のせいだろう、仮面をかぶり、何もしゃべらない。
シュミット様は一所懸命しゃべっていたが、お姉さんはたまに相槌を打つだけ。
そんな感じでお茶会は終了した。
「姉上なんだけど昔は明るい人だったんだ」とポツリとシュミット様が行った。
「いつも僕の冗談に笑ってくれて、笑うと花が咲いたようで……」とシュミット様はうつむいてぽつりぽつりとなしていた。
なんか可哀想になった俺は、「顔の方はわからないが、足ならある程度はなんとかなるかも」と言った。
すると、シュミット様は目を見開いたように俺を見て、「足が治るのかい!どんな治癒師からも無理だと言われたんだよ!」と言った。
足は関節の部分が難しい。治せなくはないけど、時間がかかるし、調整に手間がかかる。とりあえずその部分だけ機械で代替すれば歩けるようになるだろう。
「できる限りやってみたいのだけど、許可を取ってくれますか」と尋ねると、「すぐに話をするよ!」と言って飛んで行ってしまった。
翌日、俺はお姉さんと会うこととなった。
「本当に治るのですか?」お姉さんは不安そうに尋ねた。
「時間はかかりますが、ある程度までは治癒できますよ」と言って、足を出してもらった。
片足が膝の下で無くなっていた。俺は魔法を使い、足に魔力を這わして足を延ばしていった。何日かかけてゆっくり足を延ばしていった。
足首のところまで伸びた後、金属魔法で作った足をはめた。
関節のところが可動式になっており、ばねの反動でまるで足があるように歩けるようにしていた。
「王女様、歩いてみてください」と言って、手をもって、ゆっくりと立ち上がった。
「立てる、立てるわ!」とものすごく喜んでいた。
「それでは足を進めてみてください」
王女はゆっくり足を進めた。魔石を埋め込んであり、土魔法で地面にフィットするよう作ってあるので、足が滑ることなく安定して歩けるようになっていた。
最初は体を支えて補助しなければならなかったが、練習の結果、かなり歩けるようになった。
治療のため、毎日会っていたら、すっかり気に入られたのだろう、すっかり歩けるようになっても、毎日のように呼ばれるようになった。
だんだんと仲良くなる二人を見て、シュミット様と王妃様はすごく喜んで俺たちを見守っていた。
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